
2021年12月3日発売の「日経トレンディ 2022年1月号」では、「2022-2030大予測」を特集。近年、存在感を示す代替肉は技術が進歩し続け、2030年には培養した赤身のステーキ肉がスーパーに並び、和牛のサシを再現したものも食べられるようになる。肉の食感を生み出す「筋組織化」の技術は日清食品グループがリード。この分野にはスタートアップや大学も参入し、開発競争が加速する。
※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成
近年、存在感を増す代替肉が求められる背景には、従来の家畜飼育が地球環境に負担をかけていて持続可能ではないとされる問題がある。ただ、植物性たんぱく質由来のものは食感や味の点で、本物との差をゼロにするのが難しい。そこで期待がかかるのが、家畜の細胞から作り出す培養肉だ。
「日経トレンディ 2022年1月号」の購入はこちら(Amazon)
「世界初の培養肉ハンバーガーが誕生」。世界を驚かせたこのニュースを覚えているだろうか。2013年にマーストリヒト大学(オランダ)のマーク・ポスト教授が牛の筋肉細胞を基に培養ミンチ肉を開発。3000万円超の価格も含めて、世界の話題をさらった。その後、マーク・ポスト教授らはモサ・ミート(オランダ)を立ち上げ、米アップサイド・フーズ(元メンフィス・ミーツ)やイスラエルのスーパーミートなども開発が進む。今や培養肉市場は活況だ。
■培養ミンチ肉(オランダ・マーストリヒト大学、マーク・ポスト教授)
現在、立ちはだかる大きな壁は、高い開発コスト。細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー(東京・文京)は、自社開発の細胞培養プラットフォーム技術でクリアしようとしている。「カルネットシステム」は、動物の臓器間相互作用を模した培養環境を構築。この仕組みを、「食品加工メーカーなどに供給して参入企業を増やし、市場全体の活性化を狙う」(インテグリカルチャー)。
細胞増殖の密度向上など技術開発が進めば、コスト低減も視野に入ってくる。培養肉事業がビジネスになることを実証するため、同社も培養肉の商品化を進めていて、22年中に東京都内の一部レストランに培養フォアグラの提供を計画している。
■培養フォアグラ(インテグリカルチャー)
【2030年はこうなる!】赤身のステーキ肉がスーパーに並ぶ
こうした培養ミンチ肉などの延長線上にある未来が、細胞由来のステーキ肉だ。進んでいるのは日清食品グループで、17年から東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授と共同で開発を進めてきた。ステーキ肉は適度なかみ応えが醍醐味だが、その食感は筋組織の立体構造による。融合した細胞が細長い線維となり、それらがつながっているからで、細胞を塊にした一般的な培養ミンチ肉とは違う。
その作り方について、日清食品ホールディングスグローバルイノベーション研究センター健康科学研究部の古橋麻衣氏は「まず、牛の細胞が1列に並ぶよう細長く穴をあけたシート状に成型する。シートを培養すると細胞同士が融合・線維化。牛の筋肉が動くための構造ができることを確認できていて、実際の筋肉にかなり近い」と説明。そのシート同士を重ねて一体化させ、さらに電気刺激による成熟化までに2週間かける。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー