2022-2030大予測 第8回

2021年12月3日発売の「日経トレンディ 2022年1月号」では、「2022-2030大予測」を特集。紙幣や硬貨が消え去り、デジタルな法定通貨「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)が広く流通するかもしれない。世界に先駆け、カンボジアで590万人が既に利用。日銀も実証実験をスタートさせるなど、各国の中央銀行も検討を開始する。

※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成

デジタルな法定通貨が世界中に広がる
デジタルな法定通貨が世界中に広がる

前回(第7回)はこちら

【2030年はこうなる!】すべての店がキャッシュレスに

 国が発行する紙幣や硬貨が、近い将来世界中から消え去るかもしれない。ここにきて各国の中央銀行が、法定通貨のデジタル化に向けて動き出しているからだ。

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カンボジアで590万人が既に利用 QR決済の要領でキャッシュレス決済

 紙や金属を使わないデジタルな法定通貨は、専門用語では「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)と呼ばれる。既にCBDCの発行に踏み切った国も出てきている。2020年10月、バハマが「サンドダラー」、カンボジアが「バコン」と呼ぶCBDCの発行を始めた。

 世界の先駆けとなるカンボジアのバコンは、実はコアシステムソフトを日本のFinTechスタートアップ・ソラミツが開発した。「開始10カ月たった段階で、国民の3分の1となる590万人がバコンを使ってなんらかの取引を実施。顕著なのは個人間送金が活発になったこと」(ソラミツ社長の宮沢和正氏)。銀行口座開設率が22%と低いとあって送金環境が整っていなかったが、直近半年で累計5億ドル分のバコンが国内を行き交ったという。

 バコンでは、カンボジア中央銀行が財布代わりとなるウォレットアプリを国民向けに提供。バコンのコアシステムには既存の銀行や決済事業者がつながり、国民は銀行口座にある法定通貨「リエル」と国内需要が強い「米ドル」をバコンに換金できる。

スマホがウォレットに。入金も出金も自由自在
スマホがウォレットに。入金も出金も自由自在
■カンボジア中央銀行
国内FinTechスタートアップのソラミツが開発したブロックチェーン管理ソフト「Hyperledger Iroha」を採用。同ソフトはラオス中央銀行もCBDC向けに検討を始めている
国内FinTechスタートアップのソラミツが開発したブロックチェーン管理ソフト「Hyperledger Iroha」を採用。同ソフトはラオス中央銀行もCBDC向けに検討を始めている
ソラミツ社長の宮沢和正氏は、電子マネーEdyの事業会社ビットワレット(現楽天Edy)を創立した実績などで知られる
ソラミツ社長の宮沢和正氏は、電子マネーEdyの事業会社ビットワレット(現楽天Edy)を創立した実績などで知られる

 残高を使った店舗での買い物は、現在のQRコード決済と同じ要領で、店頭に掲示した専用のバーコードを読み取り金額を入力する。送金は相手の電話番号を指定するだけでよく、24時間365日リアルタイムに完了できる。

 国民がバコンを評価し使い始めた理由について金融・決済システムが専門の麗澤大学経済学部中島真志教授は、次のように分析する。「CBDCには、現行の電子マネーやキャッシュレスサービスに対して消費者や加盟店が抱えている不満の大半を解消できる力がある。それが証明された格好だ」

 まず消費者からすれば、法定通貨なので、1000円札や100円硬貨と同じく、全国津々浦々すべての店舗や施設で支払いを受け付けてもらえる。ある店では使えないということがない。あらゆる人や店舗の間をよどみなく流通できる転々流通という特性もある。チャージした残高を別口座に移動できないといった不便がない。

 要はスマホのウォレットに入ったバコンは、財布の中の現金とまったく同じ特性を備えるということ。おまけにデジタルなので物理的な紙幣や硬貨を手渡す必要がなく、瞬時に遠くにいる相手のウォレットにも移動できる。

■デジタル通貨「バコン」の特徴
6つの特徴が、CBDCを後押しする
6つの特徴が、CBDCを後押しする
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