
「あのとき、あの施策を打っていたら」。そんな過去を悔やむマーケターの悩みは、今後解消されるかもしれない。データの因果を予測し、意思決定を助ける技術を提供する企業が米エール大学助教授の成田悠輔氏が率いる半熟仮想(東京・杉並)。サイバーエージェントやZOZO、メルカリと幅広い企業が連携し、成果を出し始めた。
Webページを開くと大量の商品の写真と共に、商品の説明や価格が並ぶ。米国で人気の家具やインテリアのECサイト「Wayfair(ウェイフェア)」。一般的なECサイトと異なるところは、どのユーザーがどのタイミングでアクセスするかで、価格を最適化しているところだ。
同じ商品なのにユーザーによって価格が変わる。価格の差による「“炎上”リスクを取りながら、価格を細かく最適化する先進的な取り組みを導入した面白い会社」。そう話すのは、約5年前に、同社とこの仕組みを構築するプロジェクトに関与した経済学とデータ科学の専門家であり、半熟仮想代表の成田悠輔氏だ。
成果は明確に出た。ウェイフェアでは従来、アマゾンなどの競合サイトの価格を参照しながら同等の価格を付けるという方法を取っていたが、新しい手法で価格を最適化すると、従来と比べて、利益換算で15~20%向上した。この実験後、同サイトは継続して成田氏らが構築した価格最適化の仕組みを利用し続けている。

半熟仮想は、「因果推論」「反実仮想」といったデータ分析の手法で新しい社会をデザインするというビジョンを掲げ、成田氏が立ち上げた企業。
因果推論は、データの入力と出力から、その因果関係を推定する理論のこと。反実仮想は「もし~をしていたら~だったのに」という現実とは反対のことを考えるという意味。「もしこのアルゴリズムを採用したら、どんな成果が得られるか」と予測する反実仮想機械学習という技術が広がりつつある。
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