
個店が多く、IT化も遅れ、レガシーな産業だと思われていたパン業界に、DX(デジタルトランスフォーメーション)で新風を巻き起こしているスタートアップがある。群馬県桐生市に本社を構えるパンフォーユーだ。全国のパン店からパンが届くサブスクリプションサービスには、登録待ちの人々が“行列”をつくる。人気の秘密に迫った。
設立:2017年1月
製品/サービス:パンスク、パンフォーユー オフィスなど
市場:パン販売店DX

パンフォーユーは、「新しいパン経済圏を作り、地域経済に貢献する」というミッションを掲げ、2017年に創業。独自の冷凍技術とITを組み合わせ、パンを作る人だけでなく、売る人、食べる人をつなげて“三方良し”のプラットフォーム構築を目指す。
強みは、同社独自の冷凍技術にある。独自開発したパンを個包装する専用ビニール袋を使うことで、家庭用冷凍庫でも高い品質を維持したまま冷凍をし、配送が可能になった。個店が多いパン業界では、業務用の高性能な冷凍庫を用意する資金もスペースもない。店舗は特別な設備投資をせずに、焼いたパンを袋に入れて冷凍をするだけでEC化できる。
また、店舗作業のDX支援も同時に行う。同社はパン店向けのITシステムを提供しており、事業者はスマホだけで注文や出荷の対応、データ管理などができる。ECへの参入や業務効率化によって、店舗の収益拡大につながると期待される。
パンフォーユーは、パン店と消費者をつなぐために、複数のサービスを展開している。1つは、個人向けに冷凍パンを定期宅配する「パンスク」。詳細は後述するが、提携パン店は40社以上、会員登録者は既に1万2000人を突破している。現在は登録するために整理券を配布し、最大3カ月待ちというから驚きだ。
2つ目が、オフィスの冷凍庫に冷凍パンを届ける法人向けの「パンフォーユーオフィス」。冷凍庫のレンタルにも対応し、東京を中心に200社以上の企業で導入され、21年6月からは大阪でも本格展開を始めた。さらに、飲食店やEC、小売店などのパンを売りたい企業とパン店をつなぐ、OEMのプラットフォーム「パンフォーユーBiz(ビズ)」も拡大中。展開商品数は既に400種以上、取引企業数も100社を超える。
“行列”のできるパン・サブスク 人気の理由は
独自サービスの中でも、個人向けのパンスクはサブスクリプションモデルを採用しており、極めてユニークだ。1回3990円(税、冷凍送料込み)で、提携している全国どこかのパン店からお薦めのパンが届く。受け取る間隔は、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回から選択できる。
19年9月に無料モニターとして300人を募集したところ、5000人の応募が殺到。その後、20年2月に本格ローンチしたところ順調にファンを増やし、前述のように登録待ちの“行列”ができる状態になっている。
なぜこれほどパンのサブスクが人気を集めているのか。それは驚きを醸成する巧みな仕掛けにポイントがある。
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