
味の素、日清食品、キユーピー……。名だたる大手食品メーカーがこぞって手を組んだ企業がある。飲食店の厨房作業を丸ごと請け負う調理ロボットや、食品工場の効率化を助ける業務ロボットを開発するTechMagic(テックマジック、東京・江東)だ。先端フードテックが導く外食の未来とは。
来店客が好みのパスタを選んで注文すると、最短41秒で熱々のパスタが出来上がる――。
そのパスタ専門店にパスタの調理スタッフはいない。一連の調理工程を担うのは、最新鋭のパスタロボットだ。
注文に応じて自動でパスタがゆで麺機に投入され、連動してIHフライパンで具材とソースの加熱調理が始まる。パスタのゆで上がりを見計らって、左右に動く4軸のロボットが出来上がった具材とソースを運び、器用にパスタと混ぜ合わせる。そして再度パスタをピックアップし、最終の盛り付けを行う店員の元へと届ける。
この間、1~2食目は75秒、3食目以降は41秒程度しかかからない。こうした一連の調理工程すべてを人が行うより、パスタの提供スピードは2倍速く、それでいて味のブレもなく、常に最高の状態で提供できるという。
そんな爆速&すご腕パスタロボットを活用した新業態店を、プロントコーポレーション(東京・港)は2022年春に都内で出店する計画だ。1号店でフランチャイズ展開に向けた検証を進め、「5年後には50店舗の規模にしていきたい」(インキュベーションカンパニー長の杉山和弘氏)と意気込む。
このパスタロボットを開発しているのが、18年創業のスタートアップ、テックマジック(東京・江東)だ。同社を率いる白木裕士社長はボストン コンサルティング グループ出身。独立に当たって当初は1人で暮らす高齢者などに向け、健康的でおいしい豊かな食卓を提供したいと、家庭用の調理ロボットの開発を検討した。しかし、家庭用調理ロボットは求められるサイズやコストの壁が厚い。そこで、その前段階として必要な技術を蓄積するために外食産業をターゲットに据え、テックマジックを起業した。
設立:2018年2月
製品/サービス:外食産業向け調理・業務ロボットシステム
市場:調理の自動化によるコスト削減、外食の新価値創造

ガストで働き、つかんだロボット活用の勝ち筋
白木氏に飲食店で働いた経験はなかった。そのため、創業準備期間は、昼は事業計画を作り込み、夜はすかいらーくグループの「ガスト」でアルバイトとして働く“二重生活”をしばらく続けた。ガストの厨房スタッフとして食器洗いから調理まで経験する中で、外食産業の“現実”を知るとともに調理ロボット活用の勝ち筋を見つけたという。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。