
コロナ禍で飲食のデリバリー市場が急拡大し、「ウーバーイーツ」以外にも、「Wolt」や「DiDi Food」「foodpanda」などが続々と日本に上陸。2021年6月には、米国最大手の「DoorDash」も日本進出を果たした。そんなデリバリー戦国時代に、国内勢として独自サービスで対抗するのがChompy(チョンピー、東京・目黒)だ。その戦略と勝算に迫る。
設立:2019年6月
製品/サービス:フードデリバリープラットフォーム「Chompy(チョンピー)」
市場:飲食DXアプリ

Chompy(チョンピー、旧社名シン)は、2019年6月に創業したばかりのスタートアップだ。ディー・エヌ・エー(DeNA)出身で、個人間カーシェアの「Anyca(エニカ)」の事業責任者を務めた大見周平氏が立ち上げた。「もともと、DeNAに入社したのは、創業者の南場(智子)さんが日本発のグローバルナンバーワンをつくろうとしていることに共感したから。その文脈で考えた場合、チャンスがあるのが、国内での競争が激しく、世界で見ても特に品質が高い飲食の領域だと思った」と、大見氏は話す。
だが、問題も多くあると大見氏は感じていた。特に仕組みの面は課題が多く、進化も遅れているというのだ。
洗練された店舗は十分あり、質の高いブランドも数多い。だが、肝心のそれらを届ける流通の部分が整備されていない。国内では世帯構成にも所得水準にもばらつきが出て、日常の食へのニーズは多様化している。例えば、ランチは低価格に抑えたいというニーズがある半面、1皿1000円以上の高級サラダをランチに食べたいという人もいる。だが、インフラが未熟なために対応できていなかったのが現状だ。
その点に目を付けて、コロナ禍の宅配需要を追い風に急成長を遂げたのが、流通の一形態であるデリバリービジネスのプレーヤーたちだ。デリバリーは単に売り上げ増という果実をもたらすだけではない。従来は800メートル程度だった1店舗の商圏を3キロメートル程度に拡大できる可能性がある。デリバリーで相当な売り上げが見込めるようになれば、今まで来店客向けに割いていたスペースも縮小できる。
飲食店では生命線だった立地の制約も少なくなる。町外れにあっても、デリバリーがあれば十分カバーが可能だ。「飲食は、1000万~2000万円の初期投資がかかっていた立地勝負の状態から脱却し、来店ありきではない新たなビジネスモデルを構築できる。つまり、単なる流通上の変化だけでなく、飲食業界を中心とした日本の食が大きくアップデートされようとしているのが現状の本質」と、大見氏は言う。
そうした時代の転換を見越して、大見氏率いるChompyが20年8月に正式ローンチしたのが、国産フードデリバリーサービス「Chompy」だ。チェーン店ではなく、個人経営の人気店を対象とし、アプリにはオーナーの写真やコメントを載せたり、複数で注文すると配達料が無料になる「オフィスランチ便」を提供したり、フードデリバリーの巨人、ウーバーイーツとの違いを鮮明にしたデリバリーポータルアプリとしてスタートした。手始めに渋谷区や新宿区、港区など東京の都心を中心に展開。「毎月約40パーセントの成長率で伸長し、特に渋谷エリアでの伸び率は非常に高かった」と、大見氏は話す。
隠し玉のアプリビジネスへピボット
しかし、これからさらにエリアを拡大するかに見えた矢先に、Chompyは大胆な勝負に出た。参入したデリバリーポータルへの積極的な資金投入を抑え、店舗ごとに公式アプリを開設する新たなビジネスへとピボット(方向転換)を図ると、21年8月に発表したのだ。
その理由を大見氏はこう話す。「外資系を中心に、デリバリーポータルには既に約10社が参入していた。我々もアグレッシブに資金調達して事業を広げようとしていたが、外資は調達を本国で行っており、数百億円、数千億円のバジェットを持った状態で上陸している。投資合戦になると先はなく、市場の成熟化に伴い発生した新たな課題にいち早く着目すべきだと判断した」。
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