未来の市場をつくる100社 2022年版 第7回

2021年、メタバースに並び注目を集めたデジタル関連のキーワードが「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」だ。国内でも多数のNFT関連サービスが登場しつつある。SBINFT(東京・港)の「nanakusa(ナナクサ)」は個人アーティストのデジタル作品をNFTで世界に広げる“出島”を目指す。

個人のアーティストが作品を販売できる日本発のNFTマーケット「nanakusa」
個人のアーティストが作品を販売できる日本発のNFTマーケット「nanakusa」

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 NFTは、暗号資産(仮想通貨)と同じブロックチェーンの仕組みを応用することで、あらゆるデジタルコンテンツについて、誰が所有しているかを記録するための技術。NFTによって、デジタルのイラストや3Dアート、デジタルカメラの写真などの所有権を売買できるようになる。この仕組みにより、元のデジタル作品の価値が高まり、2次流通の市場も広がることが期待されている。

 LINEは2021年6月にNFTマーケットのベータ版を開設しており、22年春に本格展開すると発表した。楽天グループも22年春にNFTマーケットの開設を予定しており、NFTサービスの熱気がますます高まりそうだ。いち早く21年4月に本サービスを始めたSBINFTのnanakusaは、企業が発行するデジタルコンテンツだけでなく、個人のアーティストが出品できる日本発のNFTマーケットだ。

社名:SBINFT(エスビーアイエヌエフティー、東京・港)
設立:2015年5月
製品/サービス:NFTマーケットプレイス「nanakusa」
市場:個人クリエーターが出品するNFTマーケット

 「プレスリリースを打ったが市場からの反応がほとんどなかった」。SBINFTの高長徳CEO(最高経営責任者)は、20年5月にNFTサービス構築プラットフォーム「GO BASE」を発表した当時を振り返る。従来は社名をスマートアプリとしており、創業者から会社の代表を引き継いだばかり。焦りを感じていた中で、唯一連絡があったのはメジャーアイドルグループのデジタル配信権を持っていた国内ブロックチェーン企業だった。

 コロナ禍の中で配信されるオンラインライブ。リアル会場で大きな収益をもたらすグッズ販売のビジネスも縮小となっている。そうした状況下で、メンバーのスナップ写真をトレーディングカード風のデジタルコンテンツ「NFTトレカ」として販売しようという提案だった。即座に「『やりましょう』と話し、10月までの3カ月でなんとか形にした」と高氏は振り返る。

 オンライン公演後にNFTトレカの販売を開始すると、各公演で用意していたNFTパック100セットがすぐ品切れに。卒業が迫っていた人気メンバーのカードなどは、わずか40秒で売り切れた。専用アプリをつくり、クレジットカードで簡単に購入できるようにすることで、目立った問い合わせもなかった。NFTという新しい仕組みで配信しているにもかかわらず、簡単に購入できるようにしたため「トレカを買ったファンの中で、NFTが使われていると認識していない人も多いのでは」(高氏)。仮想通貨に詳しいギークや専門家以外で、国内の一般消費者にもNFTコンテンツが広がり始めた瞬間だった。

多様性を感じさせる「春の七草」「秋の七草」という言葉から「nanakusa」というサービス名称を付けた。作品や取引履歴のデータを全てブロックチェーン上に記録する「オンチェーン」という方式をとっていることも特徴
多様性を感じさせる「春の七草」「秋の七草」という言葉から「nanakusa」というサービス名称を付けた。作品や取引履歴のデータを全てブロックチェーン上に記録する「オンチェーン」という方式をとっていることも特徴

 アイドルファン達の市場反応を見てNFTの可能性を改めて実感した高氏は、国内でNFTのマーケットプレイスが広がっていなかったことに気づいた。企業がNFTコンテンツを販売するサイトは存在していたが「個人が制作した作品を販売できる場が日本ではなかった」(高氏)ことから、20年末からマーケットプレイスの開発に着手した。

 21年に入ると音声SNSの「Clubhouse(クラブハウス)」のブームが起きた。高氏も、毎日のようにアクセスしては、関連の集いに参加し、積極的に「NFTのマーケットプレイスとは何か、何が実現できるか」と語るなど、エバンジェリスト役を買って出た。すると、ブロックチェーンかいわいの有識者だけでなく、多数のアーティストから声をかけられることが増えてきた。

SBINFTの高長徳CEO(写真/菊池くらげ)
SBINFTの高長徳CEO(写真/菊池くらげ)

 「コロナ禍でアートイベントが開催できない」「海外で認知度を高めたい」「NFTによる2次流通で収入が得られることに可能性を感じる」――。そうした作家たちの話を聞きながら「海外でニンジャ、サムライといった言葉を好きな人もいれば、アートでも和のテイストを好む人がいる。日本の作品を世界に広げたい」と高氏は考えるようになった。当初はアニメ風イラストやマンガといったサブカルチャー系を主体に扱うことを考えていたが、徐々にアート系へと方向性を切り替えていった。

 高氏は急ピッチで開発を進め、21年3月にはベータ版、4月にはnanakusaを本リリースした。

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