未来の市場をつくる100社 2022年版 第2回

2022年にスタートアップ業界はどこへ向かうのか。海外のIT大手がその影響力をますます高めている状況を変え、日本発の変革を起こすことはできるか。日本ベンチャーキャピタル協会の会長で、インキュベイトファンド(東京・港)の代表パートナー赤浦徹氏に、IT評論家の尾原和啓氏が聞いた。

日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)会長でインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏(左)に、IT評論家の尾原和啓氏(右)が、今後のスタートアップ業界の展望を聞いた
日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)会長でインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏(左)に、IT評論家の尾原和啓氏(右)が、今後のスタートアップ業界の展望を聞いた

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 withコロナからafterコロナへと、急激な変化の時代を迎えている。ネット会議やテレワークによる非対面・非接触のDX(デジタルトランスフォーメーション)はある程度進んだ。今後は実際のビジネスで、新しい時代に向けた変化を目指していくことが求められる。

 そうした革新の担い手となり得る次世代のスタートアップを国内からどう育成していくか。1999年の独立から、一貫して創業期に特化した投資育成事業に取り組み、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)会長として国内スタートアップを育成する赤浦徹氏に、『アフターデジタル』などの著書を持つIT評論家の尾原和啓氏が問いかけた。

尾原和啓氏(以下、尾原) 新型コロナウイルス感染症が拡大する中で東京五輪・パラリンピックが開催され、「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄政権となって、デジタル庁も発足。海外に目を向けると米フェイスブックがメタと社名変更するなど、2021年もさまざまなことがありました。そうした中で21年に見えてきたスタートアップ市場の変化は何ですか。

赤浦徹氏(以下、赤浦) 面白みはないかもしれませんが、SaaS(サース、クラウド経由のソフト提供サービス)が引き続き強い状況が続いています。不安定で見通しにくい経済の中で、SaaSに対して着実に大きなお金が動いています。

 その傾向は、日本でも顕著になってきています。MRR(月間経常収益)やARR(年間経常収益)といったバリュエーション(企業の価値評価)の目線や、LTV(顧客生涯価値)/CAC(顧客獲得費用)倍率といった指標が見えやすく、お金が集まりやすくなっています。

尾原 コロナ禍で売り上げが落ちるBtoC(消費者向け)企業がある一方で、BtoB(法人向け)は堅実ということですね。

赤浦 BtoBかつリカーリング(継続収益)モデルということです。一定の収入が継続的に入るストック型で安心感があり、そこに大きくお金が集まった1年でした。

 ただ、日本のスタートアップはバリュエーションがMRRの100倍ほどとなっているのに対し、米国ではMRRの1000倍。そういう点では、日本はまだ10分の1の規模に過ぎません。

独立系ベンチャーキャピタル(VC)、インキュベイトファンドの代表パートナーで、JVCA会長の赤浦徹氏。VC大手のジャフコ(現ジャフコグループ)で8年半投資部門に在籍し、投資育成業務にあたる。1999年にVCを独立開業、2010年インキュベイトファンド設立。19年7月よりJVCA会長
独立系ベンチャーキャピタル(VC)、インキュベイトファンドの代表パートナーで、JVCA会長の赤浦徹氏。VC大手のジャフコ(現ジャフコグループ)で8年半投資部門に在籍し、投資育成業務にあたる。1999年にVCを独立開業、2010年インキュベイトファンド設立。19年7月よりJVCA会長

尾原 そうした差が生まれる背景は何でしょうか。

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