
オンライン英会話サービスを展開するビズメイツ(東京・千代田)は、自社サイトの申し込みフォームに大きな課題を抱えていた。項目を最小限にするなど、フォームの入力の負担を減らしても離脱率は6割を超えていた。打つ手はないと思われていたが、EFO(エントリーフォーム最適化)に取り組み、チャット式のフォームを導入。スマートフォンでの入力完了率は1.3倍に向上。CRO(コンバージョンレート最適化)に取り組んだことで、月間の顧客の獲得数は前年比で1.3倍に増加した。
EFOとは個人情報を入力する、ネット通販サイトで配送先やクレジットカード情報などを入力するフォームの最適化を指す。顧客がせっかく個人情報の入力まで進んでいるにもかかわらず、ここで取りこぼしてしまっていては大きな機会損失になる。入力の負担を減らし、ストレスなく入力を完了できるようにするなど、入力完了率を高水準に保つことは売れるサイトの絶対条件だ。
ビズメイツはEFOに限界を感じていた。同社はオンライン英会話サービスを提供する。英会話のようなサービスの場合、いきなり本契約を申し込ませるのはハードルが高い。資料請求や無料体験レッスンなどを通じて、サービスの価値を実感してもらい、最終的に契約に至るステップが重要になる。ビズメイツのコンバージョンの定義も無料体験レッスンの申し込みだ。
Webサイト訪問者に自社サービスの利点を伝え、学習意欲を高め、まずは無料体験レッスンの申し込みにつなげるまでがビズメイツのWebサイトの役目となる。「広告による集客は、運用代行を依頼している広告代理店がPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回して効果を高める。一方、集客先であるWebサイトのCVR(コンバージョン率)向上には自社で改善を重ねなければならない」とビズメイツの西川貴規マネージャーは語る。
従来のEFOでは離脱率が一定より下がらない
特に申し込み完了の最後のとりでとなるフォームの改善には、力を入れてきた。入力項目を最小限にしたり、入力漏れを指摘したり、途中で補助する機能を導入したりするなど、懸命にEFOに取り組んだ。それでも6割超が離脱していたという。「取り組んでいたEFOが完璧だとは思っていないが、これ以上の改善は見込みにくいと考えていた」と西川氏は振り返る。
既に十分と思い込んでいたフォームだが、実はまだ改善の余地が残っていた。例えば、無料体験レッスンの利用を促すボタンと誘導先のギャップだ。無料体験レッスンを受けるには、まずサービスの無料会員に登録してもらう必要がある。ところが、体験レッスンを受けたくてボタンをクリックしたにもかかわらず、誘導先が登録フォームだったため、「会員登録させられる」という印象を与えていた可能性がある。
また、フォームに誘導する前のページにも必要な情報は掲載しているはずだが、全員がきちんとすべての情報に目を通しているとは限らない。会員登録が必要なことや、具体的にどのようなレッスンを受けられるのかを詳細に読んでいない場合、結果的に「無料体験レッスンを申し込もうと思ったのに、会員登録を促された」という、コミュニケーションのすれ違いを引き起こしかねない。
これを解消するために2020年9月に導入したのが、EFO支援のwevnal(東京・渋谷)が提供するチャット型EFOツール「BOTCHAN EFO」だ。同ツールはチャット形式の入力フォームとチャットbotを組み合わせて、会話をする感覚で登録を促せるのが特徴。フォームは入力項目が多いほど、訪問者の画面に表示されると同時に入力が面倒になり離脱につながる。チャット型にすることで、店員が一問一答で会話するように個人情報の入力を促し、負担を下げて入力完了率の向上につなげることを目指して開発されたツールだ。
同ツールを導入し、ビズメイツのWebサイトで無料体験レッスンの申し込みボタンをクリックした訪問者をフォームではなく、画面の右下にチャット画面を表示して登録を促すようにした。まずは1カ月間をテスト期間と設定して、前月と比較することでチャット型フォームの評価を目指した。
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