売れるサイトのつくり方 「CVR最適化」の勘所 第4回

花王の子会社で化粧品ブランドを複数展開するエキップ(東京・品川)は2019年度に大手IT企業が提供するECサイトのパッケージを導入して、システム全体を大幅に刷新した。ところが、マーケティング施策を自在にできる柔軟性に乏しかった。改修にも大きなコストと時間を伴う。そこで、システムに手を入れずに導入できるCRO(コンバージョンレート最適化)ツールを採用。動画や美容部員の商品レビューを打ち出す施策でCVR(コンバージョン率)を改善している。

花王子会社のエキップ(東京・品川)はさまざまなCRO(コンバージョンレート最適化)策に取り組む
花王子会社のエキップ(東京・品川)はさまざまなCRO(コンバージョンレート最適化)策に取り組む

 「通販事業を強化するために実施したECサイトのシステム刷新だったが、結果的に失敗だと思っている」

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 「RMK」「SUQQU」などの化粧品ブランドを展開するエキップのD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)統括部の大谷恒氏はこう打ち明ける。大谷氏が所属するD2C統括部はブランド横断で、ECサイトの売り上げを増加するためのマーケティング施策に取り組む組織だ。システム刷新は、同組織の設置前に実施された。同部の設置後、本格的にCRO(コンバージョンレート最適化)強化を検討し始めたタイミングで、そうした課題が発覚したという。

 「失敗」の判断材料は2つある。1つ目は「ブランド側の実現したい機能が実装されていなかった」ことだ。「決済手段の追加やより使いやすいUI(ユーザーインターフェース)の刷新など要望は多数あったはずだが、今までのサイトをただ横にスライドさせただけだった」(大谷氏)。ただ、旧サイトを新システムに乗せ換えただけの刷新にとどまっていた。

 さらに追い打ちをかけたのが、2つ目の判断材料である「システムの柔軟性の低さ」だ。「既に作り込まれているパッケージは、改修に時間がかかる」(大谷氏)。ECサイトを売れるサイトへと改善するCROは、1つの施策で大きくCVRが跳ね上がることはない。積み上げ式で、顧客にとって使いやすいサイトに改善をすることで徐々に高まっていく。ところが、システム上の課題から迅速に改善を繰り返すことが難しかった。

 「システムの抜本的な改修が難しいため、手を加えずに導入できるCROツールが必要になった」(大谷氏)。こうした課題を抱える中、エキップが採用したのは、店舗の美容部員が商品利用の実体験を写真と併せて投稿できる「レビュー投稿ツール」と「Web接客ツール」だ。いずれもサービスのタグを加えるだけで導入できる手軽さが導入の決め手になった。

エキップは商品レビューの投稿ツールとWeb接客ツールを組み合わせて活用し、サイトのCVR(コンバージョン率)を高めている
エキップは商品レビューの投稿ツールとWeb接客ツールを組み合わせて活用し、サイトのCVR(コンバージョン率)を高めている

アパレル向け写真投稿ツールを美容に応用

 特に目覚ましい成果を上げている施策が、2021年7月に始めた美容部員による商品レビューコンテンツの掲載だ。これまで商品ページの主なコンテンツだった商品やモデルなどの写真は、専門家が撮影するため消費者から見ればリアリティーに欠ける。「商品を検討するためのコンテンツ量が非常に少ないのが課題だった」(大谷氏)。これを解決する取り組みだ。

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