
NTTドコモとマガシーク(東京・千代田)の共同事業のアパレル通販サイト「d fashion」は、サイト全体のCVR(コンバージョン率)が1%以下と、業界水準以下だったことが発覚した。広告による集客一本やりの手法に限界を感じる中、レコメンドツールとWeb接客ツールを活用したCRO(コンバージョンレート最適化)を強化。「カートに商品が残っている」ことを訴求した施策では、非表示の場合と比較してCVRが2.7倍となった。そうした施策を積み重ね、サイト全体のCVRも業界水準を超えた。
d fashionは、ドコモが子会社のマガシークと共同で展開するアパレル通販事業だ。2013年のサービス開始後、約6年間はブランド認知の拡大と売り上げ増加を狙い、広告施策やドコモのポイントプログラム「dポイント」を活用した販促策にマーケティング予算の大半を投じてきた。売り上げは100億円を突破するなど、順調に成長しているかのように思えた。
ところが、実態は順風満帆というわけではなかった。「アクセス数はかなり多かったが、サイト全体のCVRが1%を切っていた。競合調査ではファッション系ECサイトだと1~1.1%が業界水準だった」とマガシークのコンシューマー事業本部の小手川大介本部長は振り返る。広告や販促策に金を投じても、肝心の集客先であるサイトが売れるつくりになっていなかったため効率が悪かった。「ここを高めていかないと、事業成長は見込めないという危機感があった」(小手川氏)。
これまで注力していなかったCROに目を向け、サイト全体を売れるつくりへと変えていくことが急務となった。ただ、1つ大きな課題を抱えていた。それは「システムの問題」だ。
企業がCROに取り組みづらい理由として挙がりがちな課題でもある。例えば、古くから運営してきたWebサイトを機能拡張する形で“増築”を繰り返してきた場合は、直接手を加えることでどのようなエラーが起こるか予測しづらい。また、他社の基幹システムと連係している場合はセキュリティー面などから、そもそも改修が難しいといったケースが挙げられる。
d fashionは後者に当たる課題を抱えていた。NTTドコモの会員基盤と連係しているため、サイトそのものの改修が難しかったのだ。とりわけ強く制限がかけられていたのが、フォームの改修だ。「配送先などの会員情報にドコモの顧客基盤を使っているため手を加えにくい」(小手川氏)。入力項目が変われば、会員基盤であるデータベースにも手を加えなければならない可能性もある。
システム上の課題からEFOは実施が困難
特集1回目では、CROではEFO(エントリーフォーム最適化)から取り組むのが王道だと解説した。小手川氏はそれを理解していたものの、システムの制限がそれを阻んだ。そこで、頭を切り替え、レコメンドツールやWeb接客ツールを活用して商品や情報を提案する、“空中戦”で売れるサイトづくりに挑んだ。これらのツールはサイトに直接手を加えなくても、サービスのタグをサイトに埋め込むだけで導入できるため、システム課題の影響を受けにくい。導入で狙うのは購入意欲の向上だ。
「アパレルのような商材は、常に顧客が欲しいと思う商品が変化し続けている。今日、欲しかった商品が翌日にはいらなくなっている可能性もある。商品と出合った一瞬で、いかに買いたいという気持ちを醸成するかが重要になる」と小手川氏はアパレル通販ならではの顧客心理を説明する。だからこそ、1回のアクセスで購買意欲を最大限に高める施策が重要になる。活用を強化したのがレコメンドツールとWeb接客ツールの2つだ。
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