売れるサイトのつくり方 「CVR最適化」の勘所 第1回

売れるサイトづくりに欠かせないのが「コンバージョンレート(CVR)最適化」だ。「CRO(コンバージョン・レート・オプティマイゼーション=CVR最適化)」とも呼ばれる。いくら広告で集客しても、Webサイトが買いやすいつくりになっていなければ客は逃げるばかり。穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものだ。本特集ではCROツールをサイト訪問者の購買プロセスで整理し、有効活用する方法を事例と共に解説する。

CVR(コンバージョンレート)最適化が施されていないサイトへの集客は、穴の開いたバケツに水を灌ぐようなものだ(写真/Shutterstock)
CVR(コンバージョンレート)最適化が施されていないサイトへの集客は、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものだ(写真/Shutterstock)

 ECサイトで商品を購入しようと、カート画面から個人情報を入力するフォームへと移り、住所、氏名、決済方法を選択して、購入ボタンを押す。これで購入完了と思いきや、エラーが表示されて進まない。どうやら、住所の番地を全角で入力しなければならないようだ。いら立ちを感じながらも修正し、再び購入ボタンを押すと、またもやエラー。繰り返すうちに購入意欲が失われ、当該サイトを離れた――。

 こんな経験はないだろうか。売れないサイトの典型例である。エントリーフォームの使い勝手の悪さがやり玉に挙がりがちだが、売れないサイトの理由は山ほどある。送料が分かりづらい、商品画像が少なくて不安になる、サイト内の検索機能が使いづらくて欲しい商品が見つからないなど、枚挙にいとまがない。このようなサイトの欠陥がほったらかしの状態では、せっかく集客しても客は逃げるばかりである。

 こうした購入体験を阻害する要因を取り除き、購入に結び付きやすくする取り組みがCROだ。ネットで商売をする上で、集客策と並び、極めて重要性の高い施策のはず。ところが、「企業のマーケティング投資は明らかにCROのウエートが低い。集客には10億円をかけるが、CROには5000万円もかけられないということになりがちだ」とCRO支援会社Repro(東京・渋谷)取締役CMO(最高マーケティング責任者)の中澤伸也氏は指摘する。

CROへの投資が進みにくい理由

 その理由を中澤氏は「広告を活用した集客策は、広告代理店任せにしやすい。獲得単価などから、投資対効果も計算しやすく、自社でノウハウがなくても広告費を増やせば結果につながりやすいからだ」と説明する。デジタル広告はテクノロジーの進化によって、加速度的に効率化が進んできた。広告代理店も広告費に見合った成果を返すために、そうしたテクノロジーを駆使して広告効率を高めてきた。長年蓄積してきたノウハウがあるため、CPA(顧客獲得単価)などの目標から逆引きでプランを組み立てることで、比較的投資対効果が予測しやすい。

 一方、CROは投資に対して、どれぐらいCVRが高まるかを予測しづらい。改善に取り組んでも、改善幅は微々たる上昇率であることは多い。仮説を立て、使いやすいように改善を繰り返すなど、地道な施策の積み重ねが必要なため手間がかかる。また広告代理店任せだった企業ほど、社内にデジタルマーケティングのノウハウが乏しい。そのため、重い腰が上がらないというわけだ。

 ただ、どれだけ広告の集客効率を高めても、肝心の自社サイトが売れるつくりになっていなければ、いずれは限界を迎える。実際、アパレル通販サイト「d fashion」をNTTドコモと共同展開するマガシーク(東京・千代田)は、「売り上げ維持のため、広告にコストをかけ続けることに限界を感じた」(マガシークのコンシューマーサイト事業本部の小手川大介本部長)ことから、CRO強化に動きだした。売り上げを生みやすいサイト構造にして、広告効果の向上を狙う。

 消費者がネット利用に費やす時間が増え、デジタル広告のマーケティング活用が当たり前になるほど出稿する企業が増え、競争は激化し、広告効率は悪化していく。だからこそ、集客した顧客をしっかりとコンバージョンへと導くCROに目を向け、売れるサイトづくりに本腰を入れる必要があるのだ。

売れるサイトに共通する4つの指標とは

 では、CROに取り組むためには、何から手をつければいいのだろうか。それを考える上で、サイト訪問者のページ遷移を「サイト訪問」「商品ページ」「カート」「決済(個人情報入力)」「購入完了(登録完了)」という、5つに分解した。事業モデルによっては、購買ではなく会員登録や資料請求がコンバージョンと定義されることもある。その場合は決済が個人情報入力、購入完了は登録完了となる。また、あくまでも最短のルートであることをご留意いただきたい。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
36
この記事をいいね!する