売れる色 2021~2022 第11回

墨、書道用具、文具メーカーの呉竹(奈良市)が販売する「からっぽペン」が、累計販売本数30万本を突破した。背景にあるのは、近年の文具人気の理由の1つとなった「インク沼」ブームだ。買ったのに消費していないインクを使って独自のペンを作れるうえに、ペンを作る際にインクを混ぜて好きな色をつくれる楽しみもある。

「ほそ芯」タイプの「からっぽペン」。ほかに「ほそふで芯」タイプもある。(左) 「ink-café おうちで楽しむ私のカラーインク作り/キット」。キット内容は、インク5色(透明・イエロー・ピンク・ブルー・グレイ、それぞれ約25ミリリットル入り)各1本、からっぽペンのほそ芯2本、マドラー2本、インク空容器(容量25ミリリットル)2本、調色用カップ1個(20ミリリットル用)、説明書(インクレシピ)。(右)「日本ホビーショー」や「文具女子博」の体験ブースを経て改良を重ね、「マツコの知らない世界」などの人気TV番組でインクやペンに関する特集が行われるなかで同社の手作りペンが取り上げられる機会もあり、SNSの口コミと合わせて露出を増やしていったという
「ほそ芯」タイプの「からっぽペン」。ほかに「ほそふで芯」タイプもある。(左) 「ink-café おうちで楽しむ私のカラーインク作り/キット」。キット内容は、インク5色(透明・イエロー・ピンク・ブルー・グレイ、それぞれ約25ミリリットル入り)各1本、からっぽペンのほそ芯2本、マドラー2本、インク空容器(容量25ミリリットル)2本、調色用カップ1個(20ミリリットル用)、説明書(インクレシピ)。(右)「日本ホビーショー」や「文具女子博」の体験ブースを経て改良を重ね、「マツコの知らない世界」などの人気TV番組でインクやペンに関する特集が行われるなかで同社の手作りペンが取り上げられる機会もあり、SNSの口コミと合わせて露出を増やしていったという

 2020年3月に呉竹が発売したからっぽペンは、「空(から)」のペンに自分でインクを入れてオリジナルのペンを作ることができる商品だ。ペンの内側には縦に長く綿が入っていて、その綿をインクに浸して吸い上げたものを外に漏れないようにカッチリと蓋を閉めることで完成する。

前回(第10回)はこちら

 単品でも販売しているが、からっぽペンのほかに基本となる5色のインク(透明・イエロー・ピンク・ブルー・グレイ)が入っている「ink-café おうちで楽しむ私のカラーインク作り/キット」も発売。その5色の混ぜ方次第で自分の好きな色をつくれる。空容器も同梱されているため、つくったオリジナルのインクを保管することもできて、自分が持っているガラスペンや筆にも使える。

 呉竹のWebサイトではインクの割合を変えてつくれる84色を紹介していて、キットに付属の説明書に印刷されたQRコードからチェックできる。それぞれのインクの配分は「レシピ」として共有され、コロナ禍で家の中でできる趣味として取り入れやすい。呉竹の企画マーケティング部のマスター、武藤亜矢子氏は「自分で作って組み立てたペンには愛着が湧いて、人に見せたり自慢したりしたくなる」と自作ペンの魅力を語る。家の外から中に移ったコト体験の環境変化に適応できたことが、売れ行きにつながったと分析している。

 からっぽペンのメインターゲットは、20代から30代。ペン先には2種類があり、手帳などに日常使いしやすい「ほそ芯」と、筆圧の強弱で線の太さがコントロールでき、カリグラフィーやイラストへの使用を意識した「ほそふで芯」がある。21年3月にはカートリッジタイプのからっぽペンも発売。お気に入りのインクをカートリッジに詰めておけば、インク補充の手間もかからず、好きなインクで書くことができるようになった。

からっぽペンのほそ芯
からっぽペンのほそ芯でレタリングをした様子
こちらは、ほそふで芯。ほそ芯は扱いやすく、ほそふで芯は強弱を付けられる
こちらは、ほそふで芯。ほそ芯は扱いやすく、ほそふで芯は強弱を付けられる

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
9
この記事をいいね!する