
回転すし市場は、スシロー、くら寿司、はま寿司の100円チェーン御三家で7割(売り上げ金額ベース)。かっぱ寿司と元気寿司を合わせると84~85%になる。残りの15~16%を占めるのがグルメ回転すしチェーンだ。ご当地の特色を生かした営業で人気を集め、特に金沢市は観光客も訪れる激戦区になっている。大手100円チェーンと店舗運営スタイルや利益構造はどう異なるのか? 100円チェーンの拡大は脅威なのか? 考察する。
「5番テーブルに3名様ご来店です」「がってん承知!」、「ただ今から国産の本マグロをご用意します」「がってん承知!」――。来客や目玉商品の案内のたびにすし職人の威勢のいい掛け声が店内に響くのは、回転すしチェーン「がってん寿司」。新型コロナウイルス禍以前から口元の表情が見える透明シールドマスクを着用して店内を活気づけている。元禄寿司のフランチャイズ店を皮切りに、FC契約が終了した1995年に屋号を変更して以降、店舗数を拡大。その多くが埼玉県にあることから、「山田うどん」「ぎょうざの満洲」と並んで、埼玉県下では一定の知名度を持つチェーンである。
あん肝の軍艦や真鱈(マダラ)の白子軍艦、とらふぐなどを含む冬の5貫握りが990円(税込み、以下同)という具合に、メニュー内容と価格帯はスシローをはじめとする大手チェーンとは一線を画す。“白身のトロ”の異名を持つ高級魚ののどぐろが数量限定・売り切れ御免で登場することもある。厚切り、デカネタがウリの「グルメ回転すし」と呼ばれる業態だ。
「おいしい舞台へ、ようこそ!いらっしゃいませ」--。入店するや、こんな掛け声で出迎えてくれるのが「すし銚子丸」。1都3県で91店舗(21年5月期)を展開する、こちらもグルメ回転すしの一角。2017年から18年にかけて、「週刊ダイヤモンド」や「日経トレンディ」の外食チェーン顧客満足度調査で1位になったこともある実力派だ。
銚子丸の名の通り、銚子港から水揚げされたばかりの新鮮なすしネタへの評価が高い。店舗限定で入荷するネタはTwitterの「銚子丸入荷情報」アカウントや店内のホワイトボードで告知している。
もう1つの特徴は、店舗を「劇場」に見立て、板場に立つ職人やスタッフを「劇団員」、リーダーを「座長」と自称していること。関係者以外立ち入り禁止の従業員専用入り口にも「劇団員専用~」と表記するほど徹底している。店舗に直接届く鮮魚を水槽からすくい上げて来客の前でさばいて握るプロセスを見せながら、職人との会話や活気を楽しんでもらうのが大手チェーンにはない特徴だ。イベントとして、マグロの解体ショーを開催することもある。ワンランク上のすしネタプラス独自のエンタメ接客が人気の理由だ。
コロナ禍においては、20年7月にECサイト「銚子丸オンラインショップ」の開設、出前館、UberEatsへの対応、テークアウト専門店の出店、テークアウト予約に対応した銚子丸アプリの配信開始、デジタルサイネージの全店導入による広告、営業強化と、矢継ぎ早に手を打った。こうした取り組みが奏功し、21年5月期の売上高は前年の181億円から178億円へ1.6%減に抑えながら、営業利益は6億円を確保した。
100円皿が中心の大手チェーンよりもさらに鮮魚調達コストがかかるグルメ回転すしは、どうやって利益を上げているのか。特集第2回でスシローの原価率が50%に迫るほど高いことを紹介したが、銚子丸の原価率は40%ほどと100円チェーンよりもむしろ低い。
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