
新型コロナウイルス禍もなんのその!? 飲食店市場に逆風が吹き荒れるなか、業界2強が“過去最高”を達成したのが回転すしチェーンだ。強さの根幹にあるのは、回転すしの誕生当初から地道に築き上げてきた自動化システム。人手不足の解消などを目的に開発してきたDX(デジタルトランスフォーメーション)と超効率化策が、非接触が求められるwithコロナ時代に実を結んだ形だ。
回転すしチェーンのブランド「スシロー」を展開するFOOD&LIFE COMPANIESは、2021年9月期決算を発表。連結売上高は2408億円(前年同期比17.5%増)、営業利益は229億円(前年同期比89.9%増)と過去最高益を記録した。また、業界第2位の「くら寿司」も21年10月期決算によれば、国内における売上高は995億300万円(前年同期比14.7%増)と過去最高を更新した。
コロナ禍による先の見えない長いトンネルが続き、大きな影響を受ける飲食店が多いなか、なぜ回転すしチェーンは“過去最高”を打ち出せるのか。そこには各社が地道に取り組んできたさまざまな施策やテクノロジーなどに裏打ちされた3つの理由があった。
回転すしが生まれたのは1958年(昭和33年)。東大阪市に開店した「廻る元禄寿司」がルーツだといわれている。従来はカウンターで提供されることが多かった高級料理であるすしを、工場のベルトコンベヤーをヒントにしたアイデアとテクノロジーの力で大衆化。そこから、湯飲みを押し込めば湯が出る自動給茶装置やシャリを握るすしロボット、タッチ式の注文パネルなど、約60年の歴史のなかでさまざまな技術が誕生し、急速に進化した。あまたある飲食店のなかで、ここまで効率化を究めたジャンルも珍しい。回転すしは生まれた当初からテクノロジーの塊だったのだ。
もともとは、より多くの人にすしを提供するという、すし職人の作業効率化を考えて生まれた自動化技術だが、少子高齢化で深刻な人手不足に悩まされるようになった現代日本の状況にそうしたテクノロジーが見事にはまった。さらに、自動化や省人化でスタッフの数が減れば、客との接点も少なくできる。そこから生まれた「非密」や「非接触」という新たな価値が、この未曽有のコロナ禍下のニーズとうまく合致した。あきんどスシローの堀江陽社長は「この先の労働人口が減ってくることを想定してさまざまな技術を開発、投入してきたが、たまたまそれがコロナ禍下の“非接触”というニーズとマッチした。結果として、省人化を目指す=非接触ということだった」と話す。回転すしチェーンが強い理由の1つ目は、長い歴史のなかで着々と磨き上げてきた自動化技術にあるのだ。
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