
小売店のレジ袋有料化が始まって1年余り。博報堂が実施した「生活者のサステナブル購買行動調査2021」では、「エコバッグの持参」や「ゴミの分別とリサイクル」を実施していると回答した人は8割以上を占めた。環境問題やゴミ削減を意識する人が増える中、最先端の電子はかりを活用した、日本初の“ゼロ・ウェイスト・スーパー”が目指す未来とは。
京都・河原町丸太町のバス通り沿いに、2021年7月31日、「ゼロ・ウェイスト=ゴミゼロ」を体現する日本初のスーパーマーケット「斗々屋(ととや)」が開業した。店内すべての商品を個包装しないことで、無駄なゴミを出さない。来店客は容器などを持参し、商品を持ち帰るスタイルで、欧州では広く浸透しているセルフの量り売りシステムを本格的に導入した食品スーパーだ。
店内の入り口近くには、形が不ぞろいの野菜や果物のコーナーがあり、種類も豊富。中央には、ナッツや豆などの乾物からシリアル食品、調味料、粉末のだしなどが入った透明の瓶がずらりと並ぶ。量り売りの洗剤の他、せっけんや化粧品といった日用品も含めると取扱商品は700品目以上。消費期限が短い生鮮食品や日配品は、店内奥のキッチンで調理し、総菜や併設されたレストラン用メニューとして提供し、使い切る。ゴミを出さないためには、食品ロスを減らすことも欠かせないのだ。
週2回来店しているという近所に住む女性は、店の買い物カゴにいろいろな野菜を入れた後、持参した巾着袋にオートミールを詰め、慣れた手つきで計量。また、総菜のショーケースでは豆腐や揚げ物も注文し、持参したステンレス容器に入れてもらっていた。同店の感想を聞くと、「以前はゴミの出る暮らしにストレスを感じていた。斗々屋のオープン直後から買いに来ているので、今は快適。ゴミの量は劇的に減った」と話す。
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ゴミの削減は環境問題として取り上げられることが多い。だが実は、生活者の暮らしの質を上げることにもつながる。例えば、通常のスーパーマーケットで商品を購入すると、知らない間に食品トレーの山が台所にできてしまう。そういうことがないよう斗々屋では、「食品の個包装をやめることで快適な暮らしを取り戻せることを訴えていきたい」(広報担当のノイハウス萌菜氏)という。
手間のかかる量り売りを最先端技術で解決
かつて日本でも、食料品の販売は対面での量り売りが普通だった。しかし、その後広がった顧客自身が店内をめぐって商品をピックアップするスーパーマーケットには、量り売りはなじみにくい買い物スタイルで、その“壁”を突破するには技術進化が必要だった。そこで今回、斗々屋が導入したのが、電子はかりとPOS(販売時点情報管理)レジの老舗メーカー、寺岡精工(東京・大田)による最先端のはかり技術だ。
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