
野菜売り場に隣接したガラスケース内で育った野菜がリピーターを生んでいる。インファーム・ジャパン(東京・渋谷)が手掛ける小型の水耕栽培装置(ファーミングユニット)は、環境負荷を軽減した都市部の“畑”だ。スーパーの店内約2平方メートルでの収穫量は、従来の露地栽培の約60倍に相当するという。店舗体験を変える小売り×フードテックの効果とは?
「25年以上スーパーで働いてきたが、店内で野菜を生育して売るのは初めて。野菜の成長を楽しみにする親子連れの会話など、今までになかったコミュニケーションが生まれた。おいしいとリピート客も増えている」
こう語るのはサミットストア野沢龍雲寺店店長の鴫原久人氏だ。2021年10月から店内でLED水耕栽培をしたイタリアンバジル、パクチー、わさびルッコラの3種類を販売している。
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初の商材だけに、保存方法やお薦めのレシピを手作りボードやポップで紹介した。週に2回の収穫分は全て完売してしまう。中でも一番人気はバジルだ。購入客は一緒にトマトやチーズを買う傾向があり、「店内栽培のバジルと一緒にトマトを購入いただくことによる相乗効果が出ている」(鴫原店長)。取れたて野菜を生かすための新たな消費が生まれている。鴫原店長は今後、品種を入れ替え、新たな野菜も販売したいと話す。
都内3店舗のサミットストアに小型の水耕栽培装置(ファーミングユニット)を提供しているのはインファーム・ジャパン(東京・渋谷)だ。日本国内では、21年1月から店舗での取り扱いを開始した。一部のユニット非設置店を含め、紀ノ国屋やサミットストアといったスーパーマーケットなど10店舗でサービスを手掛ける。親会社であるInfarm - Indoor Urban Farming GmbHはドイツのベルリンにあり、世界11カ国、50超の都市に1400以上のファーミングユニットを展開する。親会社はJR東日本などから出資を受けている。
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