家電革命~フードテック2021~ 第1回

ネットに接続する「IoT家電」が、日本で大きな進化を遂げている。急先鋒(せんぽう)はシャープで、すでに国内400万台を突破。調理家電の利用データからユーザーの嗜好を割り出し、適切なレシピを提案することで調理体験を変え、自社ECと連携して購買体験の向上にも斬り込む。最新のIoT家電が変える食卓の風景とは?

シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」は、すでにネット接続率が70%を超える
シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」は、すでにネット接続率が70%を超える

 自宅の冷蔵庫にある食材を考慮しながら、AI(人工知能)が分析したユーザーの好みのレシピに即した材料リストが生成され、足りない食材は、そのままネットスーパーで注文。自宅に品物が届いたら、アプリからIoT調理家電にレシピをダウンロードすると、ボタン1つでメイン料理の自動調理が始まり、理想的な食卓が完成する――。

【特集】家電革命~フードテック2021~
【第1回】 「IoT家電」が巻き起こすフードテック革命 シャープは400万台突破 ←今回はココ
【第2回】 レシピサイト&小売り連携で来店頻度35%アップ サッポロの秘策

 こんなスマートな食卓を実現することは、もはや夢ではなくなっている。そればかりか、レシピをプロの料理人が監修、届く食材も一流、それを基にした自動調理もプロの技を忠実に再現することで、レストラン並みの料理を自宅で再現し、家族と一緒に舌鼓を打つことも可能になる。

 コロナ禍で巣ごもり生活が続き、家庭で料理をすることが増えた人も多いだろう。最初は新鮮な楽しみだった料理も、毎食の献立を考え、買い物に行き、調理を繰り返すことがいつしか負担になっているケースも少なくないはずだ。そんな人にとって、最新のIoT家電を中心とした食卓の姿は、1つの理想型といっていい。

 鍵となるのは、「レシピ選択」→「買い物」→「調理」という一連の料理サイクルのデータがつながることだ。これまで分断されていたデータが、IoT家電とアプリ、連携するECなどによってつながり、ユーザーの嗜好や状況に合わせた形でアウトプットされる。

 すでに世界では、IoT家電の“頭脳”ともいえるレシピ・家電制御ソフトウエア「キッチンOS」を提供する専業プレーヤーも登場。例えば、欧州のDrop(ドロップ)は、爆発的な人気を誇るマルチクッカー「Instant Pot(インスタントポット)」と連携しており、アプリからレシピを選び、そのレシピに基づく調理をインスタントポットへ指示することが可能。今後レシピからの買い物機能も実装される見込みだ。その他、DropはボッシュやエレクトロラックスなどIoT家電を推進する大手家電メーカーとの協業も進めている。

 こうした買い物から調理まで一気通貫でつなげ、調理や購買体験を一新する「家電データ革命」ともいえる新たなフードテックの世界が今、日本でもついに花開こうとしている。

パナソニックもIoT家電に本腰

 パナソニックは2021年9月、IoT家電の構成比を24年度までに家電全体の6割に拡大し、1000万人ものユーザーと深くつながり続けることを宣言した。また、日立グローバルライフソリューションズも「コネクテッド家電」と銘打ち、IoT家電への取り組みを強化。21年3月には、食品や飲料の残量をアプリで知らせ、事前に登録したECサイトで簡単に注文できる“サブ冷蔵庫”「スマートストッカー」を投入している。

 そんな中、国内のトップランナーといえるのが、シャープだ。同社は15年に開催されたITの見本市「CEATEC(シーテック)」で、AIとIoTを組み合わせた独自の「AIoT」というコンセプトを発表。その後、着々とAIoT対応製品を増やし、現在は冷蔵庫やウォーターオーブン「ヘルシオ」、ホットクック、洗濯機、テレビなど11カテゴリー、580機種以上に拡大。AIoT対応家電の出荷台数は、実に累計400万台を突破している。

シャープの調理家電を代表する2機種。左がウォーターオーブン ヘルシオ、右がホットクック
シャープの調理家電を代表する2機種。左がウォーターオーブン ヘルシオ、右がホットクック

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