
脱クッキーへの動きが広がる中、セキュリティーやプライバシーを守りつつ、企業間のデータを解析できる「秘密計算」への注目が高まっている。日本発の技術で、海外のIT大手に主導権を握られている状況を軌道修正し、デジタルマーケティングの新時代を切り開くことはできるのか。その可能性を探る。
米調査会社ガートナーは毎年、今後注目される新技術を複数紹介する「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」を公表している。2021年10月に発表した2022年版で、前年に続きリストアップされたキーワードの1つが「プライバシー強化コンピューテーション( PEC、Privacy-Enhancing Computation)」だ。
EU(欧州連合)の個人情報保護ルール「GDPR(一般データ保護規則)」をはじめ、世界中で個人のデータやプライバシーを守るための取り組みが進んでいる。漏えいを防ぎ、安全を担保しながらデータの送信や分析をするための技術の総称がPECだ。ガートナーは、25年までに大規模な企業あるいは自治体などのうち60%がPECを使うようになると予測する。
その中核となる技術として期待が高まっているのが「秘密計算」だ。秘密計算を使うと、データを暗号化したうえでサーバーに送信し、暗号化したままでデータを分析できるようになる。これまでも、データを暗号化して送信する技術はネット上で使われてきたが、サーバーの中で分析や計算をするときにはデータの暗号化を解除する必要があった。そうした平文のデータ(暗号化されていない元のデータ)が、サーバーのハッキングなどによって外部に漏えいする可能性があったのだ。秘密計算はデータを暗号化したまま計算するため、たとえ外部に漏れたとしても、その中身を読み解くことはできない。
外部に漏らしたくないのであれば、ネットにつながっていない社内の隔離されたサーバーで計算するという方法もあり得るが、用途は限定される。秘密計算の重要なポイントは、複数の企業にまたがるデータを安全な形で分析できることにある。この特性を生かすユースケースの1つがマーケティングだ。
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