ロボット活用最前線 第15回

人手不足対応やサービス向上を狙い、外食業界の配膳ロボットへの期待は高い。だが単にマシンを導入するだけではなく、自社ブランドを意識した活用に向けて検証が進んでいる。例えば焼肉レストランチェーンを運営するトラジ(東京・中央)は、既存の配膳ロボットに独自デザインを反映させようと考えている。そのほか「ガスト」や「サイゼリヤ」の取り組みを取材した。

トラジが運営する焼肉レストランチェーンの焼肉トラジで実証実験されているソフトバンクロボティクスのServiは、既存のモデルと異なり外観を黒系のシルバーにした(写真/丸毛 透)
トラジが運営する焼肉レストランチェーンの焼肉トラジで実証実験されているソフトバンクロボティクスのServiは、既存のモデルと異なり外観を黒系のシルバーにした(写真/丸毛 透)

 人手不足が強まるなか、外食産業から注目を集めている配膳ロボットは、AI(人工知能)やセンサー技術などを盛り込んだ点が特徴。たくさんの皿を載せながら店内の障害物を回避し、テーブルまで運ぶといった自律運転をする。業務の削減につながると期待され、活用実験に取り組むチェーンが相次いでいる。

 トラジが運営する「焼肉トラジ」で2021年11月から実証実験されているソフトバンクロボティクス(東京・港)のServi(サービィ)は、既存のモデルと異なり外観を黒系のシルバーにしたモデル。店舗の空間デザインに合わせて配膳ロボットの外観を変えることで、店舗の雰囲気を損なわないようにしている。配膳ロボットが料理を運ぶが、スタッフがテーブルまで行って料理を並べ、サービス向上につなげる考え。

前回(第14回)はこちら

 配膳ロボットで先行するソフトバンクロボティクスは21年2月にServiを発売。すでにファミリーレストランや焼き肉などのチェーン店をはじめ、約200ブランドに導入され、活躍している。「Serviは人が笑顔で働くための相棒と呼べる存在」(ソフトバンクロボティクス事業推進統括FoodDX事業統括部部長の畑達彦氏)というだけに、見た目のデザインは非常にシンプル。本来は白を基調とした外観の配膳ロボットだが、トラジでの実証実験では店舗の雰囲気に合わせるためデザインを変えたという。高級店となるとブランディングを重視する企業は多い。今後、こうした例は増えてくるだろう。

猫の表情でコミュニケーション

 配膳ロボットメーカーも、さまざまな工夫を凝らしている。中国Pudu Roboticsが開発した配膳ロボット「BellaBot(ベラボット)」と「KettyBot(ケティボット)」の国内代理店の1つ、SGST(東京・港)が考えるBellaBotとKettyBotの最大の特徴はコミュニケーション能力だという。

 「SGSTでは、これからのロボットで最も大切なのはコミュニケーション能力だと考えている。猫型のBellaBotは、頭をなでるとうれしそうな顔をする。喜怒哀楽を伝えるようにしたことで、コミュニケーションに“温度”が宿るようになった」(SGSTのAI+IoT事業本部営業部の田中瑠衣氏)。猫型にしたのは、より身近な存在として親近感を抱いてほしかったから。SGSTはBellaBotとKettyBotのサイズを公開し、企業ごとにロボットの着せ替えシールを作れるようにしている。企業の色に染めることで、より身近で愛着が持てる存在になるためだ。

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