
コミュニケーションロボットや配膳ロボットがデザインを武器に新市場を開拓しているなか、産業用ロボットの分野のデザインはどうなっているか。ここでは一例として、デザイン経営を推進してブランディングや製品開発に取り組み、産業用ロボット事業などを手がけている産業機械メーカーのスギノマシン(富山県魚津市)を見てみよう。
スギノマシンは創業の精神として「自ら考え、自ら造り、自ら販売・サービスする」を標榜。技術力にも自信があり、「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解(ほぐ)す」の6つの得意分野を「超技術」として展開している。2016年に創業80周年を迎え、ブランドの強化を狙い、外部のデザイナーの支援を得ながら、デザイン経営を見据えたコーポレートアイデンティティー(CI)の再定義とプロダクトアイデンティティー(PI)の再構築を行った。
新たにブランドロゴやブランドアイコンを定め、社名の「SUGINO」の「I」に驚きを表現する「!」を用いたロゴを開発。顧客企業と同社が出合うことで生まれる驚きや感動、製品を通して提供する期待を超えた高い価値を象徴させた。さらにロゴに独自のブランドカラーである「スギノグリーン」の色を入れることで「創業の精神」を表現したという。こうした企業の姿勢をロボットのデザインにも生かしている。
PIでは顧客企業の使い勝手を第一に考え、ロボットの外観を役割に応じてブランドカラーのスギノグリーンや独自の「スギノホワイト」「スギノグレー」で色分けしている。例えば可動部分はスギノグリーン、土台部分はスギノグレー、そのほかの部分はスギノホワイトに統一しており、ロボットの動き方が視覚的に理解しやすい。安全性が高まるため、顧客企業からは好評だという。全体を同じ色合いにする産業用ロボットが多いなか、珍しいデザインといえる。
設計のプロセスも変わった。以前は、まず機械部分などを設計し、外観や色は後から考えていたという。しかし最近は最初から全体のデザインを意識し、そのうえで機械部分などを考えるようになった。ロボットを設置する場所が工場内ではなく外部の公共空間の場合は、周囲の景観を損ねないか、威圧感を与えないかなどを考慮して設計する。デザイン性を重視すると凸凹が大きい外観にならないよう、シンプルな設計にせざるを得ないため苦労は増えるが、それだけ信頼性やメンテナンス性が向上するようだ。
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