「分身ロボットOriHime(オリヒメ)」を開発・提供しているオリィ研究所(東京・中央)は、OriHimeが接客をする「分身ロボットカフェDAWN ver.β(ドーン バージョンベータ)」(以下、DAWN)常設実験店を東京・日本橋にオープンした。ロボットを動かすのはオンラインの向こうにいる「パイロット」たち。たとえ体を思うように動かせない人でも、店員として働ける可能性を開いた。

「分身ロボットカフェDAWN ver.β」エントランス。ロボットの「OriHime-D」(画面中央)が「いらっしゃいませ」と出迎えてくれる。声をかけたり動かしたりしているのは、オンラインの向こうにいる「パイロット」と呼ばれる人たちだ。たとえ思うように体を動かせない障害者でも、分身ロボットによって店員として働くことができる
「分身ロボットカフェDAWN ver.β」エントランス。ロボットの「OriHime-D」(画面中央)が「いらっしゃいませ」と出迎えてくれる。声をかけたり動かしたりしているのは、オンラインの向こうにいる「パイロット」と呼ばれる人たちだ。たとえ思うように体を動かせない障害者でも、分身ロボットによって店員として働くことができる

 DAWNでは、難病や重度の障害で外出困難な人が、「パイロット」として分身ロボットを操縦してお客さんと会話し、注文を受け、ドリンクを席まで運ぶ。

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 各テーブルにはOriHimeが1台ずつ設置されている。客はOriHimeを通じてパイロットと遠隔で会話を楽しむことができ、外出困難なパイロットはOriHimeを使うことで働けるようになる。OriHimeを通じて注文したドリンクをお盆に載せて運んできてくれるのは、やや大型で自走可能なタイプ「OriHime-D」だ。ドリンクを受け取るときも、客はOriHime-Dのパイロットと会話することができる。さらにパイロット同士が会話することもでき、全国に散らばるパイロットたちが、同じ職場で働く仲間として1つのコミュニティーに参加できる。OriHimeを使って店内でサッカーや脱出ゲームなどのレクリエーションを開催することもあるという。

 同社では18年以降4回にわたり、仮設によるカフェの実験店を開設し、分身ロボットを社会や人々の生活の中で実際に運用する試みを重ねてきた。しかし、いずれも数日から数週間程度の期間限定のイベント的な店だった。今回、21年6月に開いた初の常設店では、新たに川田テクノロジーズ、カワダロボティクス(東京・台東)と共同開発中の、手先を使った作業を遠隔操作で可能にした分身ロボット「テレバリスタ OriHime×NEXTAGE」を初導入した。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発病したためにバリスタの仕事を断念したパイロットが、テレバリスタを遠隔操作することで、再びお客の目の前でいれたてのコーヒーを提供できるようになる。このようにDAWNは、たとえ病気やけがなどで思うように身体を動かせなくなった人でも、自分の知識や技術、個性を生かして社会とつながり、新しい働き方や社会参加の方法を開拓していく実証実験の場となる。

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