
拡大が続くヘルスケア市場。2025年には団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となる「超高齢化社会」を迎える。健康管理ができるウエアラブルデバイスや、AI(人工知能)を駆使してリハビリテーションを支援するロボットなどのニーズは急速に高まりそうだ。AIの進化により、ロボットにできることの範囲も広がっている。
現在の自動車産業は「100年に一度の大変革の時代」にあるとするトヨタ自動車(以下、トヨタ)では、自動車に限らず社会全体の人に移動の自由を提供する「モビリティカンパニー」となることを宣言し、「すべての人に移動の自由を、そして自らできる喜びを」というビジョンの下、産業用ロボットの技術を応用して主に体の不自由な人や高齢者の移動を支援する「パートナーロボット」の研究に取り組んでいる。
2017年にトヨタは、医療機関向けに脳卒中などによる下肢まひのリハビリテーション支援を目的としたロボット「ウェルウォーク WW-1000」を実用化し、レンタルを開始。19年11月には、同製品の導入数は80台を超えた。同時に業態をレンタルから販売に変えて、新機能を追加した「ウェルウォークWW-2000」の受注を始めた。
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ウェルウォークは、患者の状態に合わせて体幹支持ハーネスやロボット脚を装着し、トレッドミル(ウオーキングマシン)やセンサーを搭載した本体の中で歩行の練習をする、というロボット。実際に使用して歩行の練習をしたユーザーからは、「(上手に歩けて)風を感じるような気がする」という声もあったという。療法士の負担を減らす狙いだが、WW-2000ではゲーム機能を追加したり、使用中にセンサーが異常歩行を検知した際には改善策をロボットが検討してその場で設定変更をできるようにサポートする機能を加えたりした。
介護・福祉施設、病院などが、介護から介護予防を重視した施策への転換を図っている時代の流れを受け、「歩くこと」を介護予防の第一歩として開発されたロボットもある。パナソニックが21年4月にレンタルサービスを開始した歩行トレーニングロボット「Walk training robo」だ。現在、数十カ所の施設で利用されているという。
ロボットにつかまって利用者が歩くと、歩行距離や時間、左右の体の傾きといったデータを、クラウドに自動で保存する。AIが日々の歩行状況を自動解析し、一人ひとりに最適な運動負荷を提案する。トレーニング結果はグラフで分かりやすく表現して印刷できるので、モチベーションを高める。「歩行補助器に見えないデザインだから使いたくなる」と、自発的にトレーニングに興味を持ったという利用者の感想があるほか、各種申請に必要な書類作成をサポートしてくれるため、施設スタッフの業務負担を軽減できたという声もあるという。
パナソニックではロボット本体の性能を向上させると同時に、高齢者の総合的な社会生活を、歩くことを起点にして活発化し、自立を支援できるサービスを実現したいと考えているという。
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会によると、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」においても、パナソニックは腰や腕の負担を軽減するパワーアシストスーツ「ATOUN MODEL Y+kote」などのロボットを、トヨタは生活支援ロボット「HSR(Human Support Robot)」などを提供した。
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