ロボット活用最前線 第1回

コンビニや飲食店などでは運営業務の削減を狙い、5年以内にロボットの導入活用が当たり前になる。こうした状況を見越し、動き出したのが店舗やビルの建築設計企業だ。人とロボットが共に働く最適な環境や空間とは何かについて検証を始めた。ロボット社会の到来に、多くの企業が無縁ではいられなくなってきた。ロボット活用の最前線を追う。

オリィ研究所が21年6月から運営しているカフェ「分身ロボットカフェDAWN ver.β」の風景。遠隔操作ロボット「OriHime(オリヒメ)」が接客しているが、操作している人は難病や重度障害で外出困難な人々で、社会復帰の支援を狙った(写真提供/オリィ研究所)
オリィ研究所が21年6月から運営しているカフェ「分身ロボットカフェDAWN ver.β」の風景。遠隔操作ロボット「OriHime(オリヒメ)」が接客しているが、操作している人は難病や重度障害で外出困難な人々で、社会復帰の支援を狙った(写真提供/オリィ研究所)
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 遠隔操作ロボットがバックヤードで商品の陳列を行い、自律運転する配膳ロボットがテーブルを回って顧客に料理を届けるなど、一般社会におけるロボット活用の時代がやってきた。ロボット社会の到来は未来の話ではなく、もはや現実になろうとしている。ロボットが動きやすい店舗設計とは何か、人とロボットが共に働く最適な環境や空間とは何かについて、多くの企業が探り始めた。

 オカムラは2021年6月、遠隔操作ロボットを開発するTelexistence(東京・中央)と、資本業務提携契約を締結したと発表した。Telexistenceとファミリーマートやローソンは、コンビニ店舗における商品の陳列作業をロボットで支援しようと、20年から実証実験を重ねている。離れた場所から遠隔操作できるロボットを使って店舗の業務を支援できれば、店舗スタッフの負担を削減できるというメリットがあるからだ。

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 オフィス家具大手として知られるオカムラだが、売上高の約4割を小売業向け陳列棚や什器(じゅうき)などを扱う商環境事業と呼ぶ部門が占める。そこでTelexistenceと手を組み、ロボットによる業務に最適化した陳列棚や什器などを共同で開発しようと今回の締結に動いた。ロボットは何をどこまでできるのか、手の動きはどうかなどを踏まえ、必要とされる店舗の陳列棚や什器などを設計する。店舗のレイアウトも今後のロボット社会に先んじて最適化していく。

コンビニ店舗のバックヤードから商品を陳列している遠隔操作ロボット。右は操作している様子(写真提供/Telexistence)
コンビニ店舗のバックヤードから商品を陳列している遠隔操作ロボット。右は操作している様子(写真提供/Telexistence)
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ロボットの手の大きさに対応する最適な陳列棚の大きさなどを、Telexistenceのロボットでオカムラは検証していく(写真提供/Telexistence)
ロボットの手の大きさに対応する最適な陳列棚の大きさなどを、Telexistenceのロボットでオカムラは検証していく(写真提供/Telexistence)
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 「店舗の業務にロボットを取り入れる時代が、すぐにやってくる。それまでにロボットの動きを我々も理解し、どのような店舗をつくるべきかを今から考えておかなければならない」とオカムラ商環境事業本部マーケティング部デジタルソリューション室室長の鈴木晃夫氏は話す。現在の店舗は、ロボットの動きに合わせた設計になっていない。今後、店舗スタッフとロボットが共に動ける働きやすい空間を設計すれば、店舗の作業効率の大幅な向上につながるだろうとオカムラはみている。

 これまでのロボット導入は、自社の業務をいかに効率化するかが主眼だった。だがオカムラは、自社の業務をロボットで効率化するわけではなく、ロボット社会の到来を見据えて動いた。ロボット活用はコンビニだけに限らない。今後は、あらゆる流通業の店舗でロボット活用が進むかもしれない。その前に店舗における設計デザインのノウハウを蓄積しようと考えた。社会全体がロボットを導入し始めれば、多くの企業が関わらざるを得なくなる。ロボット社会は、ロボットの開発会社だけが推進するのではない。業種にかかわらず、今後は多くの企業の対応が求められる。

ロボット稼働に最適な床の材料は何か

 ロボット社会の到来に目を向け始めた企業は、オカムラだけではない。21年9月には森トラスト(東京・港)、ソフトバンクロボティクス(東京・港)、Octa Robotics(さいたま市)、三菱HCキャピタルの4社が共同で、屋内施設におけるロボットのスムーズな運行を可能とする「ロボットフレンドリーな環境」の構築に向けた調査と研究開発を開始すると発表した。経済産業省による「令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」にも採択された。

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