
りそなホールディングス・りそな銀行は2021年4月1日、銀行業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目的とした組織改正を実施した。その組織改正により、新設された通称「DX三部」と呼ばれる部署のうちの1つが「カスタマーサクセス部」だ。同部署では、デジタルを通じて顧客と継続的な接点をつくり、そこで得たデータを基に金融サービス利用の顧客体験を向上させる、金融業ならではのカスタマーサクセスに挑む。
りそなの個人利用の顧客は約1600万人(2021年4月現在)。これまでは顧客との主な接点は店舗だった一方、「実際に対面で接客していた顧客はごく一部にすぎない」(りそなホールディングス カスタマーサクセス部長の原沢典之氏)状況にあった。大半の消費者は銀行口座の開設後、普段の生活で利用するのはせいぜいATM程度だろう。さらに新型コロナウイルス感染症拡大が直撃。来店意向は下がり、なおさら接点を持ちづらくなった。
顧客との接点が大幅に減少する中で、どのように持続的な関係性を築くかが喫緊の課題になっている。「サブスクリプションサービスの登場などにより、顧客を『維持』するという発想が広がった。消費者はいいサービスには対価を支払うが、使いづらいと感じればすぐに乗り換えられてしまう。それは金融サービスでも変わらない」(原沢氏)。「フィンテック」という概念の登場でデジタル化された利便性の高い金融サービスが相次ぎ登場し、選択肢が広がったこともその傾向に拍車をかける。
「金融はストックビジネス。人口が減っていく中で、顧客と接点を持ち続けて利用し続けてもらうことが重要」(原沢氏)と考え、顧客に寄り添う金融サービスの開発を目指し、カスタマーサクセス部を新設した。
とはいえ、りそなは専門部署の設置により、一足飛びにカスタマーサクセス施策に取り組み始めているわけではない。特集第1回で解説したように、「カスタマーサクセス=すぐに導入できる」という発想は大きな誤解だ。
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