
「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」「OMO(オンラインとオフラインの融合)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」……。一見、ばらばらのバズワードのように見えるこれらのキーワードが目指す本質は「カスタマーサクセス」である。こう主張するのは、良品計画やオイシックス・ラ・大地でデジタル戦略を推進してきた顧客時間(大阪市)共同CEO(最高経営責任者)の奥谷孝司氏だ。同氏は米ウォルマートが米アマゾン・ドット・コムと伍(ご)しているポイントは、カスタマーサクセスにあると言う。その真意を聞いた。
顧客時間 共同CEO(最高経営責任者)
――なぜカスタマーサクセスというキーワードに注目しているのか。
奥谷孝司氏(以下、奥谷) 「OMO」「DX」「D2C」「パーソナライゼーション」。一見ばらばらのバズワードに見えるが実は、どれもカスタマーサクセスが最終的な目的であるという点が共通している。
企業のマーケターが今、考えなければならないのはデジタルを活用して、“個客“を理解し、一人ひとりのカスタマーサクセスをつくっていくこと。オムニチャネルもD2Cも、コアになるのは顧客の成功体験。これまでオムニチャネルやECサイトの構築など、デジタルを活用して顧客理解に努めてきた。その結果、我々がやろうとしていることは、つまるところカスタマーサクセスだという結論にたどり着いた。
――カスタマーサクセスに取り組むには、デジタルは切っても切り離せないということか。
奥谷 その通りだ。デジタルがないカスタマーサクセスはあり得ない。すべてはデジタルがもたらしたマーケティング改革だ。これまで企業の顧客接点は、役割分担がされてきた。だが、デジタルを介することで、ECサイト、コールセンターなど複数の顧客接点で一貫したつながりを持てるようになる。マーケターは選ばれてから、利用されるまでのカスタマージャーニーを描く必要がある。
ただ、多くの企業は「AIDMA(注意・関心・欲求・記憶・行動)」や「AISAS(注意・関心・検索・行動・共有)」といった従来型の購買プロセス、つまり商品やサービスが消費者に選ばれるまでの段階でとどまっている。目の前から客と商品がなくなったら終わりだと思っているから、商品やブランドが選ばれて、検討・購入してもらうことだけにとらわれている。
特に私が長年携わってきた小売業は、最も顧客と接点がある業態のはず。そういう意味では、BtoC事業の中でも最もカスタマーサクセスに取り組みやすかったはずなのにその発想を持てなかった。結果、BtoB(企業向け)ツール導入後のフォローをすることが「カスタマーサクセス」と呼ばれるようになってしまった。長らく小売業にかかわってきただけに、これは恥ずべきことだと思っている。
テレビCMなどを活用した、一過性型のマーケティング活動がダメだとは言わない。ただ、私はマーケティングの肝は「永続性の高い活動」にあると考えている。その本質はカスタマーサクセスだ。現場を離れて、さまざまな企業のマーケティングコンサルをするようになる中でそのことに気付いた。
――マーケティングDXの本質はカスタマーサクセスである。その結論にたどり着くきっかけはあったのか。
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