カスタマーサクセスの誤解

大手企業の間で「カスタマーサクセス」の専門部署を設置する動きが広がっている。顧客の成功を手助けすることでロイヤルティーを高め、継続的な関係を構築し、LTV(顧客生涯価値)を最大化する取り組みだ。ところが、新しい概念故に正しい理解が浸透しているとは言い難い。本特集では、取材から浮かび上がってきたカスタマーサクセスにまつわる「4つの誤解」を解説する。これらの誤解に留意することで、成果に結び付くカスタマーサクセスの実現につながるはずだ。

カスタマーサクセスで失敗を招く4つの誤解が明らかになった(写真/Shutterstock)
カスタマーサクセスで失敗を招く4つの誤解が明らかになった(写真/Shutterstock)

 まず、カスタマーサクセスとは何かからおさらいしたい。直訳すると「顧客の成功」。取り組みによって目指すのは、文字通り顧客を成功させることだ。それにより、顧客のロイヤルティーを高め、継続的な購入につなげることが成果となる。ただし、成功の定義は業態や商材によっても異なる。ダイエットを目的としたトレーニングジムなら会員の体重を目標値まで落とすことになるだろう。英会話教室であれば、外国人と英語で会議できるレベルに達することかもしれない。

 ただ、それらのサービスを契約したからといって、自発的に目標を達成できる顧客ばかりではない。成長を感じられず、月謝に見合った成果を得られていないと感じれば、解約されてしまう。そうならないためにもトレーナー、あるいは講師が顧客の課題に寄り添い、伴走することで成長を実感してもらえるようになり、満足度が高まる。結果的に契約期間が長期化し、LTVが増えるわけだ。

 一人ひとりの顧客に寄り添い、能動的にアプローチすることで、購入した商品やサービスの体験価値を最大化、すなわち「買ってよかった」という成功体験につなげて、顧客ロイヤルティーを高めることがカスタマーサクセスの役割となる。それが結果的にサービスの継続利用、リピート購入、オプションなどの追加購入につながり、売り上げや利益を増加させる。

 「顧客ロイヤルティーが企業の競争力になっている時代に突入している。ロイヤルティーがないまま、購買頻度や金額を高めることは難しい」と電通デジタル(東京・港)ビジネストランスフォーメーション部門の魚住高志氏は強調する。成熟市場では従来の広告による売り込み型では、顧客の心をつかみ続けることは難しい。だからこそ、カスタマーサクセスの重要性が増している。

 ただ、カスタマーサクセスは新たな概念のため、まだまだ正しい理解が浸透していないのが実情だ。本特集の取材を通じて、カスタマーサクセスにまつわる以下の4つの誤解が浮かび上がってきた。

カスタマーサクセス4つの誤解 カスタマーサクセスには4つの誤解がある。これらの誤解を解消することで、成果が出るカスタマーサクセスの実現につながるはずだ
カスタマーサクセスには4つの誤解がある。これらの誤解を解消することで、成果が出るカスタマーサクセスの実現につながるはずだ

 まずはこれらの誤解を解くことから始めたい。1つ目の誤解は「カスタマーサクセス=BtoB(企業向け)の施策」だ。カスタマーサクセスは顧客ロイヤルティーを高めるという目的から、業態を問わない概念のはず。ところが、BtoC(消費者向け)には応用しづらいと思われている。実際に取材の過程で、そうした声を耳にすることも複数あった。

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