
衆院選投票日まであと4日。与野党で接戦の選挙区が多く関心は高まりつつあるが、かつてのような70%に迫る投票率は期待できそうにない。低投票率を食い止める施策としてコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之氏は、市区町村単位での投票率バトルを提案する。自分の居住地の前回衆院選投票率が分かる全1896市区町村のランキングも収録した。
10月31日に迫った衆院選。果たして投票率はどのくらいになるだろうか?
NHKが投票日の約3週間前に実施する世論調査で、「(投票に)必ず行く」と回答した人の割合が最終投票率と極めて近い数字になるという。前回、2017年衆院選の約3週間前に実施した世論調査で「必ず行く」が53%だったのに対し、実際の投票率は53.68%。19年参院選の約3週間前に実施した世論調査で「必ず行く」49%に対し、結果は48.80%と、確かに結果を予見するような数字が出ている。
今回の衆院選はというと、約3週間前のNHK世論調査で「必ず行く」は52%だった。もっとも今回は約2週間前の調査で56%と前週比4ポイント増えているので、上積みが期待できるかもしれない。だがいずれにしても、05年の郵政解散(67.51%)や09年の民主党への政権交代(69.28%)のときのような投票率を期待するのは難しそうだ。
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ではどうすればよいか。「ファンベース」でおなじみの佐藤尚之氏が妙案を提示してくれた。その内容はズバリ「都道府県・市区町村対抗 投票率バトル」。おらが町の投票率を上げたい、隣町の投票率に負けたくないというマインドを喚起するプロジェクトである。
佐藤氏は語る。「ビッグデータ研究で知られるマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のアレックス・ペントランド氏が書いた書籍『ソーシャル物理学』で、ソーシャル・ネットワーク・インセンティブという概念が出てくる。あるコミュニティーにおいて、『Aさんが運動を続けるとAさんにインセンティブを付与する』ケースと、『Aさんが運動を続けるとAさんの友人たちにインセンティブを分配する』ケースを比較すると、どちらのほうがAさんの運動は持続するか? MITで実際に実験したところ、後者。Aさん本人ではなくAさんの友人におカネが入るほうが、4倍運動が続いたという。つまり、自分のためよりも日ごろ交流のあるコミュニティー内の人のため、つながりのために人は動くということ。さらに、直接的な交流回数が多い、濃い関係であるほど、インセンティブが働きやすい。この原理が投票行動でも有効に働くのではないか」
地域対抗のシカケが盛り上げに一役買った事例は過去にある。遊びながら漢字トレーニングができるニンテンドーDS向けソフト「漢検DS」のプロモーションとして2007年に実施された「都道府県別『漢字力』調査」がそれだ。ネット上に全20問を用意し、回答者の得点から居住都道府県単位で平均点をリアルタイムに更新。当時はやったブログパーツに「現在の漢字エリート県は◯◯県、屈辱の最下位は…」などと表記し競争意識を刺激することで、参加者は15万人に上り、漢検DSの売り上げにも貢献した。
文部科学省が実施する「全国学力・学習状況調査」も、テスト結果を都道府県別に集計して平均正答率を出すことで、例年上位にランクインする石川県、秋田県、福井県が脚光を浴び、どんな授業が得点力アップにつながっているのか、その教育メソッドを他県が学ぶ機会になっている。
対抗バトル型を採用することで、下位の自治体住民から「さすがに不名誉なことだから次は挽回したい」という意識が芽生え、自治体側も「下位脱出」を旗頭に、啓発プログラムの開発に本気で取り組むようになる。「バトルをきっかけに意識が変わり、教育が変わることで、行動も変わるはず」(佐藤氏)
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