SaaS、DXの注目企業から、大学発の核融合炉関連企業まで。日本を変える可能性を秘める注目スタートアップが続々登場。ベンチャーキャピタル(VC)を訪ねる連載の第7回は、グローバル規模でスタートアップ支援を行う独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(東京・渋谷)。創業者でCEO(最高経営責任者)の百合本安彦氏に、注目する業界や企業を聞いた。

百合本 安彦 氏
グローバル・ブレインCEO 代表取締役社長
富士銀行(現・みずほ銀行)、シティバンク・エヌ・エイ企画担当バイスプレジデントを経て、グローバル・ブレインを設立し、代表取締役社長に就任。ネットバブル、リーマン・ショックを乗り越え、日本を代表するVCに育ててきた経営者としての経験を生かし、スタートアップ企業経営者の良きアドバイザーとなっている

――コロナ禍でもVCによるスタートアップへの資金供給は続いています。注目している分野は。

百合本 安彦(以下、百合本) 国内でVCから最も多く資金を集めているのがSaaS(Software as a Service)関連のスタートアップであり、その理由は言うまでもなくDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速です。日本は先進国の中で生産性が低く、アフターコロナに向けてさらに世界の主要国と差が開きそうなことに大企業は危機感を抱いています。

 同時に、もはやスタートアップの技術やサービスを取り込まないと勝てないというのが共通認識となっています。そうした状況下で、大企業が本腰を入れてDXを加速させる中、先進的なテックを提供し、協業するスタートアップに注目が集まっているという構図です。

 中でも脚光を浴びているのが、製造業のDXを手掛ける企業です。例えば、IoTのプラットフォームを手掛けるMODE(モード、東京・中央)。日米に拠点を構え、大手メーカーなどに対し、ロボットや工場、モビリティーなどのセンサーから様々なデータを収集してクラウドで管理、分析できるサービスを提供しています。

 また、製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」を展開するキャディ(東京・台東)も注目株です。多品種小ロットの特注品を発注したい大型輸送機器、産業機械、医療機器などのメーカーと全国の加工工場を自動見積もりと自動選定によって効率的にマッチングします。キャディは大手ハイテクメーカーを中心に約3500社と取引するほど事業が急激に伸びており、今後もさらなる飛躍が期待されます。

――オフィスワーカーのリモートワークばかりが話題に上りがちですが、それ以外のこうしたDXが、生産性向上の鍵を握っているといえます。

百合本 その他、2021年9月に東証マザーズに上場し、脚光を浴びているスタートアップの一つがセーフィーです。カメラとインターネットをつないだクラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を展開し、コロナ禍で防犯や遠隔監視ニーズを取り込み、医療、建設、飲食、物流、製造などの現場で活用が一気に広がっています。

セーフィーが展開するウェアラブルクラウドカメラ
セーフィーが展開するウェアラブルクラウドカメラ

 自動顔認証機能によって、小売店で来店者の属性や行動データを分析できたり、オフィスや建物の入退室管理にも利用できたりと、活用の幅が非常に広いのが強みです。私たちの投資先の中でも突出して伸びているスタートアップーの一つです。

食分野では、「植物肉」「シェア農園」にも成長株

――その他の領域で注目している分野は?

百合本 フードテックでは日本にも有力なスタートアップが出てきています。例えば、植物肉では、私たちの投資先でもあるDAIZ(熊本市)が挙げられます。

 発芽大豆を使った植物肉原料「ミラクルミート」を開発、生産し、ハンバーガーチェーンや食品スーパー、飲食店など、多数の企業が採用をしています。日清食品ホールディングスとの資本提携も発表され、さらなる発展が期待されます。

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