時給で稼ぐライバーの台頭、Z世代で急速に普及する音声SNS、日本流メタバース……。新ビジネスの種を探るためにベンチャーキャピタル(VC)を訪ねる連載の第6回は、ZホールディングスのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)として、グローバルにスタートアップ支援をする、Z Venture Capital(ZVC)。社長の堀新一郎氏にB2Cビジネスの注目トレンドを聞いた。

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堀 新一郎氏
Z Venture Capital社長
フューチャーアーキテクト、ドリームインキュベータを経て、2013年よりYJキャピタル(現Z Venture Capital)に参画し、同社COO(最高執行責任者)を経て16年11月より社長に就任。LINE Venturesとの統合に伴い、21年4月よりZ Venture Capital社長。東南アジアグロースファンド「EV Growth Fund」のパートナー、SBイノベンチャー取締役、Code Republicアドバイザー兼務。著書に『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』(共著。NewsPicksパブリッシング)

――B2Cサービスの昨今の大きな潮流は。

堀 新一郎氏(以下、堀) 顕著になっている流れの一つが、ライブストリーミングで一般の配信者が稼げるサービスが増えていることです。従来、「YouTube」などで収益を得る手段としては、広告収入モデルがよく知られていますが、多くのフォロワーがいる著名なYouTuber以外はそれほど稼げないのが常識でした。しかし、最近は配信中に視聴者からギフティング(投げ銭)をもらえる「SHOWROOM(ショールーム)」「17LIVE(イチナナ)」などのライブ配信アプリが普及し、配信者は「ライバー」と呼ばれ、素人でもそれなりに収益を得られるようになっています。そうした中、成長が目立っているのが、ディー・エヌ・エーが提供するライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」です。

2022年1月10日に5周年を迎えるPococha。21年5月には米国でのサービスも開始している
2022年1月10日に5周年を迎えるPococha。21年5月には米国でのサービスも開始している
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 特徴的なのが、ギフティング以外に、配信するだけで収入を得られる「時給」のようなシステムがあること。配信状況に応じて「時間ダイヤ」という報酬が発生し、それを換金することで一定のお金を得られるのです。毎日配信を続けたり、視聴者からのいいねやコメントの数、獲得したアイテム数が多かったりするとランクが上がり、徐々に時給も高くなっていきます。トップライバーになると、月収数十万円にもなるといいます。つまり、トップライバーへのラダー(職階)が用意されているため、数多くの配信者とそれを応援する視聴者を集めることに成功しているのです。これは、もともと中国の「bilibili(ビリビリ)」などが提供していたビジネスモデルですが、それをPocochaが日本国内に適用し、一躍人気のライブ配信アプリとなっています。

――Pocochaはライブ配信で稼ぐ手段を一般に広く開放したサービスといえそうですね。

 こうして個人がエンパワーメントされ、デジタル上で稼ぐ流れは、もはや不可逆だと思います。ファンやユーザーとつながって、ダイレクトに稼げる世の中に変わってきているのです。多数のクリエイターが収入を得て活躍する社会として「クリエイターエコノミー」という言葉が一般化してきています。米国では「Cameo(カメオ)」「Patreon(パトレオン)」などのクリエイターのプラットフォームがいち早く台頭し、市場が拡大しています。日本でも、THECOO(東京・渋谷)の、誰でも手軽にデジタル上にファンクラブをつくれる「Fanicon(ファニコン)」が急成長しています。アーティストのマネタイズプラットフォームとして、ライブ配信やウェブショップで収益化できる点が魅力です。日本もクリエイターエコノミー市場が盛り上がりつつあり、2022年以降さらに加速度的に広がっていくと予想しています。

Z世代にとって、「音声SNS」はカッコいい?

――SNS系のサービスに変化はありますか?

 特に若者に受けて急激に伸びているのが、パラレル(東京・港)が運営する音声SNS「パラレル」でしょう。音声SNSとは文字通りユーザーが声によってコミュニケーションを図るツールで、ライブ配信をしたり、雑談をしたりするのを目的に使います。21年の初めに話題になった米国発の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」を覚えている人も多いのではないでしょうか。

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