コロナ禍ながら、スタートアップ企業へ資金流入が加速している。2021年上半期の調達額は3245億円に達し、これは17年の年間額に迫る水準だ(INITIAL調べ)。22年に飛躍が期待されるスタートアップ企業をVC(ベンチャーキャピタル)に聞く本連載。第1回は、国内外の有力企業に投資する、サイバーエージェント・キャピタル(東京・渋谷)の社長、近藤裕文氏に聞いた。

近藤 裕文 氏
サイバーエージェント・キャピタル社長
2003年、サイバーエージェントに入社。デジタルマーケティングなどコンサルティング業務に従事。新規事業の立ち上げや博報堂やアイスタイルとのジョイントベンチャーの事業責任者を経験。13年にサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)へ取締役として参画。18年10月にサイバーエージェント・キャピタル社長に就任

――コロナ禍において、ニューノーマルな生活への対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などを背景に、新機軸を打ち出すスタートアップに資金が流入しています。注視している領域は。

近藤裕文氏(以下、近藤) まず注目なのが、長引くコロナ禍の影響で“イエナカ需要”が引き続き強い点です。特にフードデリバリーは、米国発のウーバーイーツを筆頭に、中国発のDiDi Food、ドイツ発のfoodpanda(フードパンダ)、フィンランド発のWolt(ウォルト)など、多種多様なサービスが日本に上陸し、しのぎを削っています。2021年には、米国でシェアトップのドアダッシュも日本市場へ参入を果たしています。

 そんな中、新しい切り口を打ち出している日本発のスタートアップが、Chompy(チョンピー、東京・目黒)です。従来は、個人経営の飲食店のデリバリーを請け負っていましたが、21年8月に業態転換。飲食店や小売店が簡単に公式アプリを開設できる事業を始めました。

 テークアウトやデリバリーの注文に加え、お知らせやクーポン発行、スタンプ、サブスクサービスなど様々なマーケティング機能をその店独自のアプリとして統合的に提供できるのが特徴です。デリバリーはChompyが構築した独自配達網を利用。つまり、導入店舗はウーバーイーツなど大手デリバリープラットフォームのアプリを介さず、店独自のアプリで注文を受けてデリバリーを行うことができ、さらにアプリで利用者と直接つながることが可能になるのです。

Chompyのサービスを活用した「テイクアウト&デリバリー by 東急フードショー」アプリ。惣菜・弁当、菓子、酒などさまざまなデパ地下グルメをアプリで注文し、決済まで可能。受け取りは、店舗ロッカーかデリバリーかを選べる
Chompyのサービスを活用した「テイクアウト&デリバリー by 東急フードショー」アプリ。総菜・弁当、菓子、酒など様々なデパ地下グルメをアプリで注文し、決済まで可能。受け取りは、店舗ロッカーかデリバリーかを選べる

――北海道スープカレーの「Suage」、カレー店の「ゴーゴーカレー」など、個性的な飲食店の他、「渋谷 東急フードショー」がChompyを利用するなど、飲食店以外にも採用が広がりそうですね。

近藤 日本マクドナルドといった大手チェーンは自社でアプリやデリバリー網を構築できます。ですが、資金やノウハウがない個人経営の飲食店や小売店にとっては、利便性の高いサービスだと考えられます。消費者から見ると店舗独自のアプリに見えるため、ファンと直接つながってロイヤルティーを高める効果も期待できます。ウーバーイーツなどプラットフォーム主導のデリバリーとは一線を画す日本発の新たなビジネスモデルであり、デリバリー戦国時代に日本勢として強みを見せられると考えています。

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