多くの企業において、デジタルでビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速するなか、マーケティングに期待される役割が大きく変わってきている。そこで、B2BとB2Cの領域を飛び越え、第一線で活躍するマーケターにインタビューを行い、B2BとB2Cマーケティングの違いや、今後の見通しを明らかにする。第4回は、P&Gで営業からマーケティングまで担当し、現在はアドビ マーケティング本部 常務執行役員 シニアディレクターを務める里村明洋氏に話を聞いた。

「コロナ禍でクリエイティブ分野が徐々に“民主化”されている」と話す里村明洋氏(写真提供/アドビ)
「コロナ禍でクリエイティブ分野が徐々に“民主化”されている」と話す里村明洋氏(写真提供/アドビ)
里村明洋(さとむらあきひろ)氏
アドビ マーケティング本部 常務執行役員 シニアディレクター
新卒でP&Gに入社し、日本とシンガポールにて営業から営業戦略やブランド戦略、コンセプトや広告開発などに従事。その後、Googleでプラットフォームやハードウエア、ソフトウエアなど多岐にわたるマーケティングを統括した。2019年3月にアドビへ入社。20年12月より現職。

――里村さんは、P&G時代に営業からマーケティングまでを担当し、その後IT企業のGoogleに転職しています。現在のアドビでは、どんな業務を担当されていますか?

里村明洋氏(以下、里村) 「Adobe Creative Cloud」や「Adobe Document Cloud」などを担当していて、B2B、B2Cの両方を見ています。裁量権を持って、アドビの新しい市場を広げていきたいと思って転職しました。アドビは「市場があるから投資する」「この分野でベストを尽くせ」など要件が分かりやすく、ロジカルに物事を進めやすい会社ですね。

――これまでの経験はどのような部分で生かされていますか?

里村 P&Gのマーケティングでは常に中心にいるのが顧客です。彼らのインサイトを理解したうえで、どうやって新しい市場をつくるかということを徹底して考えます。アイデアやコンセプトがあればそれを何度もテストマーケティングしてから市場に出します。顧客の気持ちを知り、刺激することで新しいニーズを広げる。さらに、顧客自身が気づかないことをすくい上げる。こうした基本的な考え方は、実はB2CだけでなくB2Bでも重要で今の仕事に生きています。

――B2BとB2Cのマーケティングに具体的な違いはあるのでしょうか?

里村 B2Bの場合、顧客は一般消費者ではなくビジネスパーソンなので、ロジカルに考えて購入に至るということが違いとしてまず挙げられます。消費者は、無意識に頭に入っている情報や小さなニーズがあれば店頭での購入につながることがあります。しかしB2Bでは購入理由をロジカルに考えますし、コストと照らし合わせ、リターンがどのくらいあるかも厳密に計算して購入します。

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