多くの企業において、デジタルでビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速するなか、マーケティングに期待される役割が大きく変わってきている。そこで、B2BとB2Cの領域を飛び越え、第一線で活躍するマーケターにインタビューを行い、B2BとB2Cマーケティングの違いや、今後の見通しを明らかにする。2回目は、エンタープライズからスモールビジネスまでをターゲットにマーケティングに従事してきたセールスフォース・ドットコム 常務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の鈴木祥子氏に話を聞いた。
セールスフォース・ドットコム常務執行役員CMO
――鈴木さんは、ジョンソン・エンド・ジョンソンやデル、日本コカ・コーラ、など様々な企業でマーケティングや営業部門を統括してきました。B2B、B2Cはもちろん、国内、海外での経験も豊富だと思います。そこでお聞きしたいのですが、マーケティングにおいてB2BとB2Cの違いはどこにあると思いますか?
鈴木祥子氏(以下、鈴木) 私はどちらもあまり違いはないと思っています。「顧客のインサイトを理解して施策を実施する」という点では同じだからです。
あえて違いを挙げるならば、B2Bの方が顧客との距離が近いので、顧客にフォーカスしてロジカルにアプローチできますし、反応もすぐに分かります。一方で一般消費者がターゲットであるB2Cの場合は、どの施策が有効に働いて購入につながったのか、リサーチや分析をしてもはっきりとは分からないことがあります。
――B2Bマーケティングならではの難しさはありますか?
鈴木 B2Bの顧客は、すでに認知しているブランドの中から購入や契約をすることがほとんどです。検討の段階ですでに候補企業リストを持っていて、9割以上がそこから選定されます。ですから、まずは認知を広め、そのリストに載ることを目指します。
「B2Bにブランディングはいらない」と考える方もいますが、認知を広めてリストに載るためには、やはりブランディングが必要です。例えば、B2Cでブランディング業務を経験している人にとって、B2Bのブランド価値を高めるための活動はやりがいがあるでしょうし、これまでの経験を生かせる分野だと思います。
B2Cではリサーチを通して顧客のインサイトを理解するというステップが重要ですが、実はB2Bにおいてはそうしたリサーチ分野はまだ発展途上です。データ分析をして、ブランド戦略に携わった経験があれば、B2Bでも活躍できるでしょう。また、B2Bで認知を上げる施策をすると、B2Cに比べて効果が出やすい傾向があります。
――B2Bで認知度を上げる施策としては何が有効でしょうか?
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