「アート思考」で重要な鍵となるのが「自分軸」だ。自分の人生の目的、行動指針、目標となるもの──そこを起点に物事を考えることで、既成概念の枠を越え、新たな発想を生む可能性が広がる。では、自分軸を探すにはどうすればいいのか。書籍『仕事に生かすアート思考 感性×論理性の磨き方』の内容を、一部抜粋・再編集して紹介する。
BODAIが行う研修は、「自分の軸」を意識することから始まります。極めて優秀でパフォーマンスも高いビジネスパーソンがなぜか壁を突破できないのは、自分の軸がいつの間にか組織やほかの考えに埋もれてしまっているから、ということが少なくありません。そもそも、自分が本当にやりたいことを意識しないことが普通になっている気がします。
自分に問いかけ、自分のことをよく知る。これからの時代には、自分の軸が重要な拠り所となります。
自分の軸とは、自分の行動の指針、人生の目的、目標になるものです。そこから離れると自分らしさを失うもの。強い興味を持っているもの。自分の周りにある、様々な出来事の中心に位置するものと言えます。
軸を意識すると認識が強まり、思いと行動が一致してきます。そして今後の人生における大きな拠り所、自分を突き動かす情熱となります。これがあると、人の心を揺さぶり、共感を集める力になります。自分が最後までやり抜けるテーマともいえます。
自分の軸とは、大きく2つ考えられます。
(1)相手があるもの
自分の行動規範的なもの、人との接し方、仕事の仕方など。こちらを考えることは大事なことで、これらも自分軸ですが、今回は次の(2)を考えてみましょう。
(2)自分の内面
創造性を出すためにBODAIアート思考で使う自分の軸とは、「自分の内面にある柱となるもの」です。「好きなもの」「面白いもの」「誰にも頼まれずに自分の意志でやったこと」、そして人生の目的、目標になるものです。小さい頃から自覚していることもありますが、人に言われたことを受け身でやっている間に、そのことに関心が湧き、強い興味を持つようになっていくこともあるでしょう。
自分の軸について、既によく自覚されている方も、この機会に改めて考えてみてください。まだ自覚できていない方は、これをきっかけに考えてみてください。
なお、自分軸の反対は、「トレンド軸」とでも言えるでしょうか。独自性を大事にし、世の中の流れとは一線を画す自分軸の反対は、世の中の流れに敏感になり、トレンドを追うようなイメージです。これを持つのはマスマーケティングでは大事です。アート思考が大事にしている自分軸とは対極に位置する、というだけです。
ただ、トレンド軸に従って追い求める市場は、レッドオーシャンになる確率が高いとも言えます。これまでポジティブだったトレンド自体も、人々の価値観が入れ替わればむしろ足を引っ張るものになるかもしれません。
自分軸の探し方 5つのポイント
ポイント①
あなたがこれまで生きてきた中で「面白かったこと」「好きだったこと」「幸せだったこと」「自分らしかったこと」、そして何より「誰にも頼まれずに自分の意志でやったこと」をたくさん書き出してみてください。履歴書を作ることが目的ではありません。経歴とは一切関係なく、ご自身が熱中してきたこと、面白いと思ったこと、自分の意志でやったことを思い出すのです。もちろん仕事のことでも結構です。とにかくできるだけ多く書き出しましょう。「自分らしかったことの歴史年表」のようなものを書いてみるのもいいですね。
ポイント②
書き出した「好きなことリスト」そのものが自分を構成する要素なので、しっかり保管をして、思いつくたびにどんどん追加していきましょう。そしてこの先、発想に困ったとき、モヤモヤしているとき、このリストを見返してみましょう。思わぬヒントが得られるかもしれません。
ポイント③
「好きなこと」リストから「共通する思い」を抽出してみましょう。好きなこと、面白いと思ったことを俯瞰して、自分にとって大事なことは何かを分析してみてください。共通して何が面白いと思ったのか、自分の内面に問いかけて、何に重みを置いているのかを抽出してみてください。「自分の内面にある柱となるもの」、つまり「自分軸」が見えてくるでしょう。あるいは増えていくでしょう。そうです、自分軸は1つの人もいるでしょうけれど、複数軸あってもいいのです。
ポイント④
もしあなたに、信頼できる先輩や友人知人がいるなら、遠慮することなく相談してみましょう。自分でも気づかない「これが好きでは?」「あれを面白そうにしていたよ」という点を指摘してくれるかもしれません。過去に言われたことを思い出しても構いません。
ポイント⑤
一度意識した「自分の内面にある柱となるもの」、つまり「自分軸」が、どんどん変わっていっても構いません。これは流されることとは違います。自分に真剣に問い続けると、あるとき、ふっと変わることがあるからです。
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