
2021年10月4日発売の「日経トレンディ 2021年11月号」では、「フィンテック最前線」を特集。スマホで注文ができる「モバイルオーダー」が浸透し、同時に使い勝手も進化している。自販機のキャッシュレス機能をアップデートしたのが日本コカ・コーラ。アップルが開発したNFCタグを自販機に貼り付け、iPhone利用者ならアプリ不要でオーダー可能にした。商機と見たジェーシービーは、映画館や野球場などで実証実験を開始している。
※日経トレンディ2021年11月号の記事を再構成
人や物との接触を避けてスマホで注文できる「モバイルオーダー」が、デリバリーや店舗以外のシーンにも広がり、同時に使い勝手も進化している。
【第2回】「後払い決済」がクレカのライバル本命に コンビニにも浸透
【第3回】家族間のお金を全部“脱”現金化 「家族共有プリカ」が進化
【第4回】都度返済で利用枠が復活するクレカ「Nudge」 若者の心動かす
【第5回】海外旅行の新必需品「外貨両替デビットカード」最得の2枚を選出
【第6回】コカ・コーラ自販機が進化 アプリ不要でiPhoneタッチ決済実現←今回はココ
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日本コカ・コーラは2021年8月、自販機でキャッシュレスで飲料が買える「Coke ON Pay」をアップデートした。従来は、公式アプリ「Coke ON」を事前にダウンロードした利用者だけが注文画面を表示して決済できたが、iPhone利用者ならアプリ不要でオーダー可能にした。
アプリがなくても注文できる秘密は、アップルが開発した「App Clip」を採用したおかげだ。自販機には円形の模様が描かれたアップル仕様のシールが貼られており、非接触IC入りNFCタグが組み込んである。iPhoneをNFCタグに近づけると、容量の小さなミニアプリをネットから瞬時に一時ダウンロードできる。カメラで模様を読み取るのでもOKだ。
ミニといってもフルアプリとオーダー機能は大きく変わらず、その自販機で売っている商品がスマホ画面に一覧表示され、同じように代金をApple Payに登録してあるクレジットカード(SuicaやPASMOは非対応)などで決済できる。
「自分の決済情報を登録することを不安がって、モバイルオーダーアプリのインストールを敬遠する人は少なくない。ミニアプリとApple Payの組み合わせなら、こうした人をCoke ON Payの世界にいざなえる」(日本コカ・コーラシニアマネジャーの宇川有人氏)
現在88万台ある同社の自販機のうち、Coke ON Pay対応機は37万台。順次App Clipシールの貼り付けを進めている。
Coke ON Pay(日本コカ・コーラ)
■アップル「App Clip」を使ってアプリ不要でキャッシュレス決済を実現
アプリ不要のタッチモバイルオーダーが新たな商機を生み出す可能性は、ジェーシービー(JCB)も注目する。21年8~9月にかけて、野球場の京セラドーム大阪や都内にある池袋HUMAXシネマズなどで実証実験を実施した。デジタルガレージが協力している。
こちらのケースは、NFCタグにスマホを近づけるだけでブラウザーが起動して注文画面が現れる工夫を施した。池袋HUMAXシネマズの場合、館内の待合スペースの壁など、5カ所程度にNFCタグに貼った。来場者は、飲食販売コーナーの密を避けて、離れた場所で注文できる。
「NFCタグは1個当たり数十から数百円程度と安く、スタジアムなどの全座席に貼ることもコスト的に難しくない。自席まで商品を運ぶようなサービスも現実味を帯びてくる」(JCBネットワーク部主任の落合航佑氏)
実証実験(ジェーシービー、デジタルガレージ)
■映画館などで壁にNFCタグを貼ってタッチ注文できる実験を実施
(写真/小西範和、加藤康)