「東京ゲームショウ2021 オンライン」では、ビジネス向けウェビナー「TGSフォーラム」を開催した。その1つ「VR(仮想現実)が変革するゲームビジネスの未来」では、メタバースの広がりを含むVRゲーム市場の可能性や展望について、国内のVRゲーム業界をけん引する3人が議論した。

ビジネス向けウェビナーをアーカイブ配信した「TGSフォーラム」。日本のVRゲーム界をけん引する3人が議論した
ビジネス向けウェビナーをアーカイブ配信した「TGSフォーラム」。日本のVRゲーム界をけん引する3人が議論した

 登壇したのは、「バーチャル渋谷」などの大規模イベント開催やゲーム作りも可能なバーチャルSNS「cluster(クラスター)」を展開するクラスター(東京・品川)の加藤直人氏、gumi創業者でオンラインマルチプレーができるVRゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』のThirdverse(東京・千代田)CEOの國光宏尚氏、『東京クロノス』など、物語性を重視したVRゲームのヒットコンテンツを生み出してきたMyDearest(東京・台東)CEOの岸上健人氏の3人だ。

ゲームチェンジャーになったOculus Quest 2

 ここ1年間のVR市場を活性化させたのは、20年10月に米フェイスブックが発売したVRゴーグル「Oculus Quest 2」だ。低価格で実用的なスペック備えることが人気を呼び、VRコンテンツの利用者を一気に増やした。

 加藤氏は、「コロナ禍の影響もあり、自宅からVRゴーグルを使ってゲームやイベント、SNSなどに参加する人が一気に増えた」とその影響を指摘。「もはやVR元年は終わった」という。

VRプラットフォーム「cluster」展開するクラスターの加藤直人氏
VRプラットフォーム「cluster」展開するクラスターの加藤直人氏

 國光氏はOculus Quest 2はゲームチェンジャー的製品だと指摘する。発売後8カ月で500万台ほど売れ、年内に恐らく1000万台を突破する。これはPlayStation 5(PS5)に匹敵するペースと見る。「売り上げが100万本を越えるタイトルも増え、最も売れているゲームソフト『Beat Saber』は500万本を超えている。ハードが売れてソフトが売れ、それでさらにハードが売れる、いい循環ができあがってきた」と話す。

VRゲームの開発やNFTなどに取り組むThirdverse CEOの國光宏尚氏
VRゲームの開発やNFTなどに取り組むThirdverse CEOの國光宏尚氏

 さらに「TikTokを運営する中国バイトダンスがVRヘッドセットメーカーの中国ピコテクノロジーを買収した。そう遠くない未来にテンセントかアリババなどもVRヘッドセットメーカーを買収するのではないか」と中国大手IT企業の参入で、巨大な中国市場がいよいよ立ち上がると予測する。

 一方で、日本のVRコンテンツマーケットはまだ小さい。現在のマーケットの8割は北米だ。その中で岸上氏は、日本人向きの物語性のあるオリジナルコンテンツを作ってきた。岸上氏は「フェイスブックが北米の次に重視しているのは日本市場。彼らは日本の開発者にもっと参加してほしいと思っている。日本でもOculus Quest 2の販売台数が増えているので、あとは日本の会社がコンテンツを出していけば市場は盛り上がる。いい流れがきている」と日本市場の将来性を見込む。

物語性を重視したVRコンテンツを生み出してきた、MyDearest CEOの岸上健人氏
物語性を重視したVRコンテンツを生み出してきた、MyDearest CEOの岸上健人氏

メタバースの4つの要素

 VRに関連して話題になるキーワードが「メタバース」だ。英語の「meta(超)」と「universe(宇宙)」を合わせた造語で、コミュニケーションや経済活動ができる仮想空間サービスを指して使われることが多い。

 國光氏はメタバースについて、5G時代のSNSの進化、ゲーム自体のSNS化によりバーチャルグラフで成功するSNSが登場してくること、VRの実在感がもたらすノンバーバル(非言語)で違和感のないコミュニケーション、ブロックチェーンによるバーチャル空間上の経済圏の4つの要素が重なってできるものだと語る。

 例えば、現在流行っているゲームはすべてソーシャル化しているという。SNSはバーチャルグラフ(現実と離れたネット上だけの関係)よりも、共通の話題があるリア友とのつながりであるリアルグラフが成功しやすい。「唯一バーチャルグラフで成功してきたのがオンラインゲーム。それは敵を倒すなど共通の目標や話題があるから。オンラインゲームは、ハイスペックなPCだけでなくスマホやゲーム機などでも手軽に楽しめるようになってきた。いよいよバーチャルグラフで成功するSNSが出てくるのでは」と予測する。

 岸上氏は「単なるコミュニケーションだけでは飽きる。ゲームをやりたくて仮想空間にあつまり、結果的にコミュニケーションが始まる。そうしてゲームから何かが始まるのがトレンドになるのでは」と語る。

日本でVRが盛り上がるのは時間の問題

 VRとリアル世界の連携について加藤氏は「リアルでの消費を増やすためにVRが使われるのでは、広告と変わらず、つまらない」と語る。バーチャル空間でデジタルなものを作って売買する、リアルでは服を持っていないがバーチャル空間での服ならたくさん持っている、そうした生活スタイルが当たり前になっていってほしい。そうして人類は質量を捨てられるのではないか。そのための過渡期としてリアルとVRの接続が使われるのでは」と語る。

 日本ではまだVRが広がっていないように見えるが、國光氏はもう課題はほとんどないと見ている。「Oculus Quest 2のような十分な性能を備えた手ごろなハードもあるし、ソフトも面白いものがそろってきた。キャズムを越えるのは時間の問題」と見る。しかし、VRコンテンツの面白さがVRゴーグルを身に着けたことがない人にも伝わるようなマーケティングが必要になるだろうと見る。加藤氏は「女性にヒアリングをしたとき、アバターがインスタグラムでまったく反応がなかったと言われた」という。よりスタイリッシュで魅力的なアバターも必要になりそうだ。

パネルディスカッションでは、VR市場からメタバース、将来の目標まで様々な意見が飛び交った
パネルディスカッションでは、VR市場からメタバース、将来の目標まで様々な意見が飛び交った

 國光氏も岸上氏も、日本のVR市場を盛り上げるためには、みんなが遊びたくなるようなゲームを作らなくてはならないと意欲を見せる。

 國光氏は「来年発表する2作品でどちらもミリオン超えを果たし、次に歴史に残るVRゲームを作る。それからVRMMORPG(Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game、アニメや映画に登場するような多くの人々が活動するVR空間を使ったゲームの進化形)へと進み、そこにブロックチェーン技術を組み合わせて、映画『レディ・プレイヤー1』のオアシスのような世界を作る。それを10年以内に行うのが目標」とした。

 岸上氏も「100万本を越えるようなゲームをVRで作りたい、コンシューマー時代のファイナルファンタジーやドラクエ、スマホ時代のモンストやパズドラやのようなコンテンツを生み出し、その過程で、VR時代の新しい才能を送り出していきたい」と語る。

 岸上氏と國光氏は最後に「我々のVRゲームで、ゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲りたい」と述べた。スマホが登場しはじめた頃、様々な企業がアプリを作り、市場を盛り上げていった。それと同様にVRでも新しいアイデアが登場してエンターテインメントの世界を広げてくれそうだ。

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