
「自動運転サービスの実現は、遠い未来の話」。そう考えているのなら、今すぐに認識を改めたほうがいい。国内でも、すでに約1年にわたって自動運転バスが定期運行され、住民の“足代わり”となっている町がある。自動運転バスによる外出促進効果が地域経済を潤す。そこで見えてきた、持続可能な自動運転ビジネスとは?
さまざまな商店が軒を連ね、道幅が狭い片道1車線の旧道を、スルスルと危なげなく走り抜ける1台の小型バス。その車両には運転席がなく、車体デザインも少々奇抜だ。しかし、対向車のドライバーも街を歩く住民も、誰も驚いている様子はない。そう、この町にとって自動運転バスが走る光景は、至って自然な「日常」なのだ。
茨城県の南西部、利根川沿いに位置する境町。実は、2020年11月から国内の自治体として初めて自動運転バスの定期運行を始めた“先進都市”だ。現状はドライバー1人が乗車し、状況に応じて手動運転に切り替える「レベル2」の扱いだが、技術的には特定条件下でシステムが完全自動運転をする「レベル4」に達している。そんな自動運転バスが、約1年も他の自動車が行き交う普通の街中を安全運行し続けているのは、国内で例がない。
【第2回】 JR東「通勤定期×飲食サブスク」の衝撃 月平均27回超のカフェ利用
【第3回】 パリからクルマが消えた!? withコロナの移動復活の鍵とは
【第4回】 衝撃の「マイカーゼロ都市」計画 先進都市は駐車場削減へ向かう
【第5回】 ANAのMaaS新戦略 “空旅”を変える「移動データ」活用の勝ち筋
【第6回】 「メタバースは悪夢」 ポケモンGOは現実世界に全集中、移動促す
【第7回】 「月5000円で乗り放題」の成果は? 交通サブスク、データ初公開
【第8回】 キックスケーター最大手Bird上陸へ 東京・立川が「移動天国」に
【第9回】 「温泉MaaS」「小売りMaaS」…… LINE活用で進む異業種コラボ
【第10回】 LINEで自動運転バスが呼べる街 持続可能な“境町モデル”とは?←今回はココ
自動運転の実装で路上駐車がなくなった?
境町は20年からの5年間で5億2000万円という予算を組み、仏Navya製の自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」(定員11人)を3台リースで購入した。タッグを組むのは、ソフトバンク子会社のBOLDLY(ボードリー、東京・千代田)など。BOLDLYが提供する自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」は、20年に国内で行われた自動運転の実証実験35件のうち約5割で採用されるなど、業界のトップランナーといっていい存在だ。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。