
世界で10億ダウンロードを記録し、国内でも老若男女を問わず、いまだに根強い人気を誇る「ポケモンGO」。人々が“巣ごもり”から目覚めるアフターワクチン時代、「外出を促し、経済を動かす」仕掛けの代表格として期待がかかる。にわかに注目を集めている「メタバース(仮想空間)」では到底なし得ない、ポケモンGOはいかに現実世界を変えるのか。
2021年、にわかに注目を浴びている「メタバース」。インターネット上に仮想的につくられた、いわば現実を超えたもう一つの世界のことで、ユーザーは自分の代わりとなるアバターを操作し、他者との交流を図る。米フェイスブックCEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグ氏は21年7月、今後5年以内に「『ソーシャルメディア企業』から『メタバース企業』へ移行する」と発言。国内でもグリーが子会社を通じて参入するなど、世界で企業の大型投資が相次ぎ、一種のブームとなっている。
しかし、このメタバース一辺倒の風潮に真っ向から異議を唱える人物がいる。それが、米ナイアンティックCEOのジョン・ハンケ氏だ。ハンケ氏は同社のブログで、「メタバースはディストピアの悪夢です。より良い現実の構築に焦点を当てましょう」と呼び掛けている。
そのうえで、社会が仮想世界に逃避しないように努力するとし、それを実現する方法がAR(拡張現実)のテクノロジーで現実に寄り添うことだとしている。つまり、同社は自宅で仮想世界に浸る人たちを「ソファから引き剥がし」、人々が外で歩き、周囲の人々や世界とつながるなど、現実をよりよくするためにこそテクノロジーは使われるべきだと考えているのだ。
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このナイアンティックの思想を形にしているのが、他でもない「ポケモンGO」である。ポケモンGOは、デジタル地図とARの技術を組み合わせ、トレーナー(プレーヤー)が外を歩き回り、スマートフォンの画面を通して路上に現れる様々なポケットモンスター(ポケモン)を捕獲するゲームだ。
トレーナーが外に出る数多くのインセンティブを備えており、地図上の至る所に設置された「ポケストップ」へ実際に歩いて近づき、スマホ画面をスワイプすることでアイテムもゲットできる。また、地図上の「レイド」と呼ばれる場所に歩いて行き、他のトレーナーと一緒に強いポケモンとの戦いに参加したり、「ジム」に行って他のトレーナーのポケモンと戦ったりできる。
だが、新型コロナウイルス感染症の脅威により、ポケモンGOは新しい課題に立ち向かうことになる。感染防止のため、人々が外出したり、集まったりすることを避ける必要が生じた。もともとのコンセプトである、外を歩き回ってポケモンを捕獲したり、戦ったりすることがしにくい状況が生まれたのだ。同社はどんな手を打ったのか。
コロナ禍で“巣ごもり”対応
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