MaaS2021:アフターワクチンの移動革命 第1回(写真)

2021年10月1日に緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除され、感染リスクと共存する「withコロナ」の中で、経済再生への模索が始まった。鍵となるのは、新たなデジタル接点を活用しながら、リアルの消費の起点となる人々の「移動」をいかに生み出すかだ。3つの新潮流を追う。

コロナ禍で大打撃を受けた2大航空会社は、成長戦略の1つとしてMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)への取り組みを強化(写真/Shutterstock)
コロナ禍で大打撃を受けた2大航空会社は、成長戦略の1つとしてMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)への取り組みを強化(写真/Shutterstock)

 コロナ禍が大きく変えたことの1つは、人々の移動に対する意識だ。これまで当たり前だった通勤・通学といったルーティーンの移動は、テレワークとの使い分けが可能になった人にとって「絶対的」なものではなくなった。買い物や食事にしても、急成長しているECやフードデリバリーに気分次第で代替できるようになった。

 つまり、移動するかどうかは、「新型コロナウイルスの感染リスクとの兼ね合いで判断される『選択肢』の1つにすぎなくなった」とジェイアール東日本企画(東京・渋谷)Move Design Labの中里栄悠氏。これが、移動意識の大きなパラダイムシフトだ。

 実際、ジェイアール東日本企画が2020年9月に行った「MOVE実態調査」では、コロナ禍を経験してアンケート回答者の約6割が「外出をするべきか考えて行動するようになった」とし、また「目的を決めて外出することが多くなった」という回答も約5割を占めた。全ての希望者が2回のワクチン接種を完了した「アフターワクチン」時代も、引き続き感染リスクに配慮が必要な「withコロナ」であり、この移動意識の基本構造は変わらないだろう。

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 ただ、人々の移動意欲は底堅い。同じくジェイアール東日本企画が毎月行っている「Move Mind Index(MMI)調査」で世代別のお出かけ意欲を見ると、コロナ禍前の19年9月とコロナ禍下の21年9月の比較で男性70代、女性60~70代以外の年代は90%を上回り、回復傾向にある。特に18~29歳男性は、ほとんどコロナ禍前の水準に戻っている。

外出意欲は高齢女性で低下しているが、若年男性などはコロナ前の水準に近づいている(出所/ジェイアール東日本企画「Move Mind Index調査」)
外出意欲は高齢女性で低下しているが、若年男性はコロナ禍前の水準に近づいている(出所/ジェイアール東日本企画「Move Mind Index調査」)

 また、21年9月のMMI調査で、ワクチン接種の有無別のお出かけ意欲は、2回接種済みの人が未接種の人に比べて0.25ポイント高い結果となった。21年の3度目の緊急事態宣言下でも、すでに人流の回復傾向が見られていたが、今後ワクチン接種済証や陰性証明書を前提に行動制限が緩和されていく見込みだ。「さらに“移動のリバウンド”が発生する可能性は十分ある。それに伴う消費を捉えることは企業にとって大きな商機になる」(中里氏)

 ここで重要になるのが、移動者と直接つながるデジタル接点だ。前述した通り、移動はもはや選択肢の1つであり、その先にある「目的」の重要度が増している。魅力的な移動の目的をいかにユーザーへ伝え、目的地までの移動をスムーズにつなげるか。あるいは、デジタル活用で移動自体を楽しいものに変えて外出を促し、新たな消費を生み出すか――。

 そんなチャレンジが今、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などの取り組みを通じてデジタル化が進む交通プレーヤーのみならず、異業種を交えて広がっている。新たなデジタル接点のトレンドは、大きく「(1)移動のエンタメ化」「(2)移動のサブスク化」「(3)移動のシームレス化」という3つに分けられる。これらは、移動者にリアルタイムでアクセスしたり、つながりを深めたりと、新しいマーケティング手段にもなり得るものだ。モビリティ革命であると同時に「移動マーケ革命」ともいえる3つの新潮流とは何か。

移動マーケに関わる3つのトレンド。本特集では、それぞれの代表事例を紹介していく
移動マーケに関わる3つのトレンド。本特集では、それぞれの代表事例を紹介していく

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