
自社の製品やサービスの熱心な顧客を増やすため、企業が設けるファン・コミュニティー・サイト。特集第5回目は、森永製菓の「エンゼルPLUS」を取り上げる。約48万人の会員を抱え、月間平均120万PVという高いアクティブ率を維持する秘訣とは何か? EC連携の成果は? 担当者に取材した。
「スモールスタートで始めた取り組みが、いつの間にか大きくなっていったというのが実感に近い」――森永製菓マーケティング本部広告部の松野員人氏がそう語るのは、同社が運営するファン・コミュニティー・サイト「エンゼルPLUS」のことだ。
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エンゼルPLUSには現在、約48万人の会員がいる。PV(ページビュー)は月間平均120万、UU(ユニークユーザー)は月間平均10万と、活発なファン・コミュニティー・サイトだ。
森永製菓がエンゼルPLUSを開設したのは2013年11月。08年に米アップルの「iPhone」が日本に上陸してから約5年がたち、スマートフォンが一般的に普及し始めたタイミングでもあった。そんな中、エンゼルPLUS開設を企画したのは、広告を取り巻く環境の変化に危機感を抱いていたからだ。
松野氏はエンゼルPLUS開設当時の状況をこう振り返る。「テレビなどのマス媒体に加え、Web広告なども一般化して(消費者が)1分当たりに接触する広告素材が増えていた。(加えて、テレビを見ながらスマホを見るといった)“ながら視聴”も当たり前になり、従来のような広告モデルだけでは限界を感じていた」
消費者に売り込む上で、他ブランドと差別化しづらいというお菓子ならではの難しさも、ファン・コミュニティー・サイト開設の理由の一つになったという。あめやチョコレートといったお菓子の魅力は味やパッケージなど様々で、「どの商品がより良いのか」を技術的優位性で示しづらい。「『お菓子は8割が非計画購買』とされている中で、森永製菓のお菓子を真っ先に手に取ってもらうには、“指名買い”を増やしたいと考えていた」(松野氏)
数多くのお菓子がスーパーやコンビニに並ぶ中、森永製菓の商品を“指名買い”してもらう。それには、森永製菓のファンになってもらう必要がある。そこで取ったアプローチが、自社の商品のファンを集め、積極的に情報発信や交流をすることで愛着を深めてもらう、ファン・コミュニティー・サイトの開設だったのだ。
重視するKPIは2つ
現在、エンゼルPLUSには、会員が写真付きの投稿を行う「エンゼルギャラリー」、会員や森永製菓の社員が自由にテーマを立てて交流する「エンゼルPLUS掲示板」、キャンペーン情報や商品開発の裏側を会員に伝える「エンゼルブログ」、商品に関するクイズを出題する「エンゼルなるほどクイズ」などのコンテンツがある。無料の会員登録後、同サイト内で投稿やコメント、「いいね」、クイズへの回答などをすることで、会員は会員同士、あるいは社員と交流する。
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