
2021年に入り、自社のファン・コミュニティー・サイトを開設する企業が相次いでいる。SNSよりも熱心な顧客と深く向き合えると期待がかかる一方、独自に会員を集め、継続するのが難しいのも事実だ。特集第4回では、開設から6年がたつ“老舗”カゴメへの取材からサイト運営のポイントとその真の効果を探る。
2015年4月のスタートから6年。会員数4.9万人(21年9月時点)にまで成長したのが、カゴメが運営するファン・コミュニティー・サイト「&KAGOME」だ。直近では年間1万人のペースで会員が増えている。企業のファン・コミュニティー・サイトとしては、多くのファンを抱え、長期にわたって運営を続けている成功例の1つだ。
「小さくてもいいから、“カゴメ愛”のある人たちが集まる、にぎやかで活発なコミュニティーを目指してきた」と、&KAGOMEの運営を担当するカゴメ マーケティング本部 広告部 宣伝グループの田口るみこ氏。その言葉通り、&KAGOMEでは、会員数が少なかった当初から4.9万人に達した今に至るまで、変わらず高いアクション率を維持し続けている。「開設時から一貫してアクション率をKPI(重要業績評価指標)としてきた。もちろんいいとき、悪いときがあるが、年間平均でみると10%をキープし続けることができている」(田口氏)という。
【第2回】 コーセーの通販ブランドがファンサイトで重視する「3つのKPI」
【第3回】 エフエム東京はリスナーを可視化 SNSにはないコメントがたまる価値
【第4回】 6年目の老舗、カゴメに学ぶファンサイト運営術 SNSとどう分ける ←今回はココ
【第5回】 森永製菓はファンを3段階で分析 失敗乗り越え会員数は48万人に
そもそも、カゴメは、なぜ&KAGOMEを開設したのか。きっかけは、同社が2014年に行った顧客構造の分析にある。それによると、売上金額が高い上位の2.5%の顧客で、同社の売り上げの30%を占めていることが明らかになった。「これは、カゴメが少数のヘビーユーザーに支えられているということ。こうした顧客を大切にし、当社の商品から離脱しないようにするための戦略が必要と考えた」と田口氏は振り返る。売り上げを支える熱心なカゴメファンに向けて、よりブランドに共感し愛着を持ってもらうためのアプローチとして、ファン・コミュニティー・サイトを開設したわけだ。
SNSとファンサイトでは役割が異なる
&KAGOMEの核となるのは、カゴメからの情報発信の場である「カゴメ便り」と、会員が自由に投稿するレシピや商品レビュー、掲示板など。無料の会員登録後、これらへの投稿やコメント、「いいね」を押すなどして、会員同士やカゴメの社員と交流できる。野菜の豆知識を紹介するコーナーや新商品に関するアンケートを実施しているコーナーもあり、その内容は多彩だ。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー