スターバックスの「挑戦」 第2回(写真)

2021年8月、スターバックス コーヒー ジャパンはパートナー(従業員)のドレスコードを改定。デニムや帽子はOK、髪の色も自由になった。パートナーからは「『こんな髪の色だから接客が良くない』と言われないように、1つひとつの行動を丁寧にしないといけないと思うようになった」という声も出ているという。

 2021年8月2日、スターバックスの日本1号店が銀座に開店して25周年を迎える日に全国の店舗パートナー(従業員)のドレスコードを改定した。「当初は期の始まりである10月1日からと考えていたが、1日も早くパートナーをこの環境にしてあげたいという思いと、25年間で初のドレスコード改定となるため、ちょうど25周年のこの日にした」というのは、スターバックスの約500店舗を管轄する東日本営業本部の林千暖本部長。

スターバックスはパートナー(従業員)のドレスコードを改定。髪の色が自由になった
スターバックスはパートナー(従業員)のドレスコードを改定。髪の色が自由になった

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「10年ビジョン」がきっかけ

 ドレスコードの改定を具体的に検討し始めたのは20年秋。10年後の自分たちの姿を示す「10年ビジョン」の策定がきっかけだ。その中で、「多様性あふれる心豊かな地域や社会を創造していく」というキーワードがあり、それを踏まえてパートナー一人ひとりがより自分らしく活躍できる環境をつくっていこうという思いで検討を始めた。

スターバックスの約500店舗を管轄する東日本営業本部の林千暖本部長。入社して23年、バリスタからスタートし、店舗業務の全レイヤーを経験してきた
スターバックスの約500店舗を管轄する東日本営業本部の林千暖本部長。入社して23年、バリスタからスタートし、店舗業務の全レイヤーを経験してきた
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 米国では過去2回ほどドレスコードをより自由にする改定を実施しており、「日本でもやってほしい」という声が上がっていた。そこで、店長300人にヒアリングしたところほぼ賛成意見だったという。「特に要望が多かったのは、髪の色を自由にしたいという要望だった」(林本部長)。また、スターバックスの店舗では10代から70代まで幅広い年齢の人々が働いており、自分の年齢や個性に合ったもの、自分をうまく表現できるものを着たいという要望もあった。

 ただ、飲食業なので清潔感や親しみやすさが損なわれないかという懸念があった。服の素材や柄が個性的すぎると顧客に良くない印象を与えたり、装飾が付いていると異物混入のリスクがあったり不衛生な印象を持たれたりしてしまう可能性もある。そこで、25店舗程度(東日本、中日本、西日本の各1ディストリクト)でトライアルをしながら決めていった。

 服装はもともと白、黒、ベージュだけだったが、今回の改定では紺やグレー、ブラウン、デニムなど、顧客が不快にならない自然な色であれば着用できるようになった(ただ、各色にカラーパレットを設定。デニムはダメージがないものに限る)。

 今回の改定の注目すべきポイントは髪の色が自由になったこと、そして帽子がOKになったことだろう。髪の色はこれまで25年間、日本人の自然な髪の色ということでダークブラウンという規定だった。トライアル時点でも髪色はダークブラウンのままだったが、スターバックスではさまざまな国の人が働いており、人それぞれ自分の髪の色があるのにそれを規定するのはおかしいのではという意見が出て、水口貴文CEO(最高経営責任者)ら経営陣もその意見を後押しした結果、自由になったそうだ。

 帽子は必要なのかという議論もあったが、さまざまな事情で自分の髪形を見せたくない人もいるという考えから、キャップやハンチング、ハット(ツバ5cm以内)を着用OKにしたという。

パートナーの個性が見え、会話のきっかけにも

 実施してみると、「ずっと赤くしてみたかったんです。すぐに美容院の予約をとりました!」と喜んでいるパートナーがいたり、年配のパートナーが意外な色のシャツを着て生き生きと仕事をしていたりなど、それぞれのパートナーが自分に似合う素材や色の服を着ていてすごく輝いて見えたという。

 パートナー同士のコミュニケーションが促進されただけではなく、顧客からも『なんか雰囲気が変わったね』『自然な感じがいいね』と話しかけられるなど、会話のきっかけになっている。SNSでは、「いつも会う店員さんがどんな服装で来るのか楽しみ」といった声も上がっていたそうだ。

 金髪にしたパートナーから「『こんな髪の色だから接客が良くない』と言われないように、お客様に見られていることをより意識して1つひとつの行動を丁寧にしないといけないと思うようになった」と言われたのが印象的だったという林本部長。まさに、マニュアルがなく、ミッションを自分で解釈してどうすべきかを考えるスターバックスだからこそ実現できたといえるだろう。

 「スターバックスはミッション&バリューズで『お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくる』を掲げており、創業当初から多様性を尊重し、パートナーが自分らしくいられる居場所づくりを大切にしてきた。18年からはInclusion & Diversityのテーマとして『NO FILTER』というメッセージを社内外へ発信している。先入観や思い込みなどのフィルターなく、一人ひとりが個性を出してお互いがそれを認め合うという考え方であり、それを再認識した」(同)

 昨今、組織の中で個性を認め合うことによって心理的安全性を確保する重要性が叫ばれている。スターバックスは組織の中だけでなく、顧客との関係性においても心理的安全性を確保しているからこそ、今回のような大胆な施策が実行できたのではないだろうか。

帽子はキャップやハンチング、ハット(ツバ5cm以内)が着用OKに
帽子はキャップやハンチング、ハット(ツバ5cm以内)が着用OKに

(写真提供/スターバックス コーヒー ジャパン)

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