マーケター向けと経営者向け、9月は対照的な2本の特集が人気でした。2021年9月に日経クロストレンドで掲載した記事のうち、有料会員が読んだ上位20本をランキング。2つの特集の記事が上位を占めたほか、50年近く前の本や廃盤になった商品をマーケティングの力でヒットさせた記事もランクインしました。

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 「マーケター」と「経営者」。日経クロストレンドを有料購読いただいている読者の属性です。この2つの層にそれぞれ刺さった特集が、9月の人気ランキングの上位を占めました。

21年9月人気記事ランキング
【1位】発表!マーケター・オブ・ザ・イヤー2021 コロナ禍の変革者5人
【2位】50年前の新書が謎の大ブレーク 新入社員が仕掛けたまさかの一手
【3位】Z世代の“オンオフ”事情 本は書店、アパレルは中国発ECで買う
【4位】BASEとインスタで売り上げ700%の雑貨店 ECがリアルの3倍売れる
【5位】EC開設の覇者は? “Amazonキラー”Shopifyと日本勢BASE、STORES
【6位】13年ぶりブランド刷新 Z世代をつかんだ「uni」シャープ替え芯
【7位】AOKI「パジャマスーツ」、逆風下で3万着売った超スピード戦略
【8位】SNSの行き着く先「メタバース」とは ITの巨人も狙う新世界
【9位】「NFT」はデジタルビジネスを変えるか マーケットが続々誕生
【10位】帝国ホテル「即日満室」の舞台裏 「住まう」へと価値を大転換
【11位】東急ハンズはShopifyとSTORESを使い分け EC戦略、二刀流の理由
【12位】Z世代に人気のTikTok企業アカウント3選 企業イメージUPに大貢献
【13位】これぞリブランディングの理想型 10年前の廃盤テープが大復活
【14位】顧客97%喪失した京都醸造がEC転換 SNS活用で売り上げ1.5倍
【15位】LINEやJR東がビーコン広告に挑む 「今ここにいる人」にリーチ
【16位】驚異の「リアルタイムマーケティング」とは 来店客別の新手法
【17位】オンラインでも満足度99% ユナイテッドアローズのLINE接客
【18位】260万人が使う人気アプリから「いいね」を撤廃したYAMAPの狙い
【19位】Shopify移行で売り上げ400%に! 京都発、ひとりEC店舗の接客術
【20位】「生ジョッキ缶」誕生の真相 再び覚醒したアサヒ挑戦者のDNA
注)8月30日~9月24日公開の記事のうち、有料会員の訪問者数(ユニークユーザー、UU)が多かった上位20本。この期間の全体の本数は202本

 1つ目が「マーケター・オブ・ザ・イヤー2021」。日経クロストレンド創刊から始め、2021年で4年目を迎えるアワードの記事です。ランキング1位の、受賞者5人を発表した記事のほか、7位のAOKI「パジャマスーツ」、10位の帝国ホテル「サービスアパートメント」、20位のアサヒビール「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」と計4本がランクイン。特集タイトル通り、特にマーケターの方によくお読みいただきました。

 今回受賞した5人がマーケティングを行った商品やサービスは、いずれも21年の世相を色濃く反映したものでした。パジャマスーツはリモートワークの流れ、サービスアパートメントは打撃を受ける宿泊業の新しい形、貝印「紙カミソリ」(記事は24位「SDGs、体験価値、性差…常識そり落とした「紙カミソリ」」)はSDGsやジェンダーフリーの要素を盛り込んだ、これまでにない商品。大賞はアサヒビール専務兼マーケティング本部長の松山一雄氏でしたが、生ジョッキ缶もコロナ禍の巣ごもりで、家でビールを楽しく飲みたいというニーズに合致したヒット商品です。

 この商品が秀逸なのは、「スーパードライ」という日本最高峰のブランドで挑戦した点でしょう。百発百中でムクムクと泡が立ち上がるよう何度も改良を重ねたとはいえ、泡が出なければ、あるいは泡が出過ぎてもクレームになるリスクをはらむ商品です。アサヒビールの屋台骨であるナンバー1ブランドを毀損する可能性すらありました。

 それでも松山氏の考えは揺るがず、スーパードライブランドを冠しました。「最先端のイノベーションはスーパードライでやるべきだという思いがあった」と語ります。今でこそナンバー1ブランドながら、もともとスーパードライは「日本初の辛口ビール」という挑戦者。ビール類シェアでキリンに11年ぶりに首位を明け渡した今だからこそ、アサヒに必要な挑戦だったのかもしれません。

経営者に人気だったEC構築プラットフォーム

 もう1つが「Shopify、BASE、STORES研究」。3つの新興EC構築プラットフォームの特集でした。4位、5位、11位、14位、19位と5本がランクイン。こちらは特に経営者の方によくお読みいただきました。おそらく自社でECを立ち上げる、あるいはプラットフォームを変更する、などの参考にした方も多かったのでは、と推測します。

 特に好評だったのが、4位の「BASEとインスタで売り上げ700%の雑貨店 ECがリアルの3倍売れる」の記事。東京・国分寺の雑貨ショップ「LAND Lifestyle Shop」のEC戦略をご紹介しました。ECの売上高が実店舗の3倍になり、2つ目の実店舗を出店する好調ぶりです。

BASEとインスタを駆使して好調を続ける「LAND Lifestyle Shop」
BASEとインスタを駆使して好調を続ける「LAND Lifestyle Shop」
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 同店の仲山彈社長はBASEのほかにも、EC拡大のため楽天市場にも出店。ですがサイト開設が難しく、その後も自分でデザイン変更などがうまくできませんでした。一方のBASEはパソコンが苦手な仲山社長でも、サイト構築は容易だったそうです。

 取り上げた3つのプラットフォームは、それぞれに特徴があります。5位の「EC開設の覇者は? “Amazonキラー”Shopifyと日本勢BASE、STORES」でその違いを取り上げていますので、ぜひご覧ください。

マーケティングの底力を示した2本の記事

 最後に取り上げたいのが、2位のインサイド「50年前の新書が謎の大ブレーク 新入社員が仕掛けたまさかの一手」です。1972年刊行の『ルワンダ中央銀行総裁日記』(中央公論新社)が、2021年だけで9万部の重版を達成という、出版不況の中まれに見るヒットを飛ばしています。しかも、仕掛けたのは新入社員を含む若手中心というのですから、なお驚きです。

 若手にはマーケティングのノウハウもなければ社内外の人脈もありません。ですがその代わり、会社にどっぷりつかった中高年社員には決して思いつけない柔軟な発想力があります。本の中身は同じなわけですから、完璧なマーケティングの成功事例といえると思います。

 ほかにも13位「これぞリブランディングの理想型 10年前の廃盤テープが大復活」で、いったん廃盤にまでなってしまった商品を諦めずに再販売にこぎつけ、ヒットさせた事例もご紹介しました。ようやく商品に時代が追いついた好例です。新たな技術革新やアイデアがなくても、会社に眠っている資産に思わぬヒットの芽が隠されている――こんな期待を抱かせてくれる記事でした。