2021年9月3日発売の「日経トレンディ2021年10月号」では、「新興小売りチェーン」を特集。コロナ禍で存在感を増している低価格が売りの新興小売りチェーン、食品スーパーの「業務スーパー」やホームセンターの「カインズ」、アパレルの「ワークマン」に迫っている。絶好調の理由を探ると、「激安+αの驚き体験」「プロ向け商品の多さ」「ニッチを恐れない」という3つの共通点が浮かび上がった。まずは、その最新トレンドを紹介する。

※日経トレンディ2021年10月号の記事を再構成

絶好調の新興小売りチェーンには、安くても高品質な商品が並ぶ
絶好調の新興小売りチェーンには、安くても高品質な商品が並ぶ

 食品スーパー、ホームセンター、アパレル。「低価格」という共通点のある3つの新興小売りチェーンが、コロナ禍で存在感を増している。

 1つ目は、食品スーパーの「業務スーパー」だ。特徴は、外国産や国内生産の大容量食品が、驚くほど安く買えるということだ。

【食品】業務スーパー

人気は右肩上がりで、21年1月に900店を達成した
人気は右肩上がりで、21年1月に900店を達成した

 2つ目は、ホームセンターの「カインズ」。ナショナルブランド(NB)商品より圧倒的に安く、他にはない技がさえたプライベートブランド(PB)商品をずらりとそろえる。

【ホームセンター】カインズ

用途は狭く、深く刺さる技ありPB商品の宝庫。226店舗
用途は狭く、深く刺さる技ありPB商品の宝庫。226店舗

 3つ目は、アパレルのワークマン。2018年に一般向け業態の「ワークマンプラス」を開業して以来、ファンをどんどん増やしている。作業服からアウトドア、スポーツ、ビジネス、女性向けと守備範囲を広げている。

【アパレル】ワークマン

 何が消費者の心を捉えるのか。共通点を探ってみた。

人気の裏には、3つの共通点があった

【1】激安+αの驚き体験

 激安は当たり前で、高品質、他にはないユニークさという、矛盾する価値を両方追い求めている。そこから来る驚きが、ファンを店に呼んでいる。

 業務スーパーの名物が、1リットルの水ようかんやコーヒーゼリーなどのデザートシリーズ。何と牛乳パックにたっぷりと入っている。ホームパーティでは、驚きの声が上がるだろう。「14年の販売開始前は、社内でも売れるのだろうかという疑問の声はあった。しかし、今では人気のため製造が追いつかず、5種類に絞り込んでいる」(神戸物産)

 カインズのPB商品は1万3000種類。「これは見たことがない」という、アイデア商品が次々と見つかり、店内を歩き回るだけで時間が過ぎる。

 ワークマンはその商品の個性に驚かされる。最近話題になったのは「着る空気」とも異名をとるポンプベスト。空気を入れて断熱材の代わりにするというユニークな一品でSNSで「着てみたい」と盛り上がった。

【2】プロ向け商品に引かれる

 2つ目の共通点は、3チェーンともにプロユースをうたう商品が多いことだ。業務スーパーはその名のとおり、飲食店経営者などを意識した品ぞろえだが、「一般のお客様もぜひ」というスタンス。「大容量で使い切れないのでは」と心配になるが、冷凍保存する、アレンジして食べるなど、大容量であることを楽しんで知恵を絞る人が多い。

 カインズでは、洗剤のラインアップにその一端を見ることができる。ガス代の焦げや風呂の鏡に付着したウロコ汚れ。プロに頼まないと取れないと思い込む頑固な部分汚れを落とす専用のプロ仕様洗剤を多数そろえる。

 ワークマン商品も、過酷な屋外で働くプロのための耐久性や機能性を備えている。一般の人とプロの境目が薄くなっている象徴的な商品が、「SOLOTEX使用 リバーシブルジャケット」。表は襟が付いたジャケットだが、裏にすると作業服に変身する。フードや収納力のあるポケットが現れる。高性能なはっ水機能があり、悪天候にも対応。これがビジネスパーソンにも売れ、完売店が続出した。

【3】ニッチを恐れない

 さらに、客層や用途がピンポイントの、「ニッチ商品」にも多く出くわす。業務スーパーは様々な冷凍野菜を取りそろえており、中でも人気なのが「揚げナス」を冷凍したもの。メニューが限られそうだが、これが便利と評判になっている。

 カインズのハンガーコーナーには、パーカーを干したときにフードが乾きやすくなるなど、限られた衣類にしか使えないハンガーが数多く並ぶ。

 ワークマンの「電熱ジャケット」も面白い。服の内側から温める、いわば「ヒーター付きテーラードジャケット」だ。ただし、これを使うシーンはコートを使えないがジャケット着用が必須の屋外と、かなり限られる。にもかかわらず、関心が集まっている。

 これらの情報は、知らないと買いに行くことはできないだろう。3チェーンとも、ファンが“勝手連”となり、SNSなどで商品情報を拡散させている。その結果、テレビ番組でもよく紹介するようになり、知名度が上がる。また、ファンがSNSなどで発信する声は商品開発に生かされ、さらに驚きのあるものが生まれるという好循環なのだ。

 また、安くても高品質な商品を作るために、店舗経営や流通についても低コストを徹底するための挑戦を数多く行っている。ビジネスパーソンにはその経営思想が参考になる。行っても何を買えばいいか分からない、という状態ならぜひ本特集で編集部が選んだ逸品と、その検証結果を見てほしい。

【まとめ】絶好調の新興小売り 共通点
【1】激安+αの驚き体験
消費者は安いだけでは飛びつかない。独自に開発したアイデア満載のPB商品など、「こんなものがあったんだ!」という宝探しにも似た驚きが心をつかむ

【2】プロ向け商品は実は一般向け
モノに関しては、一般の人とプロの境目が薄くなっている。プロ向けにつくられた店舗や商品を攻略して突き詰めたい探究心がある

【3】ニッチ用途を恐れない
こんなに用途が狭くて大丈夫か、と不思議に思う商品が売れている。使う頻度が低くても納得すれば買いたい人はいる
日経トレンディ2021年10月号
「新興小売りチェーン特集」の主な内容を紹介
【新興小売り研究】
●業務スーパー:プロ向け? 一般の人も喜ぶ激安ぶりと品ぞろえ
●業務スーパー:ヒット商品総選挙2021
●カインズ:売り上げの約4割を占める技ありPB
●カインズ:激安工具は買っても大丈夫? 徹底検証
●ワークマン:激安&高機能の新市場を開拓したアパレルの超新星
●ワークマン:完売必至! 今年のダウンの大本命
【ブレイク予測】
●コストコ:全国30店舗に拡大 日本人好みの商品続々
●カルディ:マクルーベ、セビーチェ。調味料に新顔が誕生
●イケア:都市型店舗がオープン ガジェット系が売れ筋
●イオン:ニーズの先取りが信条 他で買えない商品多数
●Amazonベーシック:カラフル商品が満載 重い商品を買うのが吉
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(写真/中野 和志、古立 康三、文田 信基=fort)

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