
雑貨ECショップ「TENTのTEMPO」を運営するのは、プロダクトデザイン事務所TENT(テント、東京・目黒)。共同代表でデザイナーの青木亮作氏は「作り手が濃厚な一次情報を直接発信し、それを受け取った消費者が作り手からダイレクトに商品を買い、一緒に盛り上げていけるような仕組みを考えるようになった」という。
まな板になるお皿「CHOPLATE」、茶葉をすくってそのままお茶を抽出できる「LOOP tea strainer」、ハンドルが着脱できてそのまま食卓に出せる「フライパン ジュウ」……。
ユニークかつ実用的なグッズが並ぶ雑貨ECショップ「TENTのTEMPO」。運営するTENTは2011年に青木亮作氏と治田将之氏の2人によって結成されたクリエイティブユニットだ。プロダクトデザイン事務所としてクライアントワークを行うほか、自社商品として暮らしの中で使えるミニマルで便利な道具を作っている。
ECショップを始めたのは2012年。しかし、ECを始めたかったわけではないという。「知り合いから『無料で簡単にできるらしいよ』と聞いてとりあえずSTORESに登録してみたが、売れるとは全く思っていなかった」と青木氏。12年にメーカーとのコラボレーションで開発が進んでいたいくつかの商品が頓挫し、自分たちで作ってECショップで売ってみたが、すぐには売れなかったという。「まだネットでモノを買うことが今ほど一般的ではなかった」(青木氏)
【第2回】 顧客97%喪失した京都醸造がEC転換 SNS活用で売り上げ1.5倍
【第3回】 東急ハンズはShopifyとSTORESを使い分け EC戦略、二刀流の理由
【第4回】 Shopify移行で売り上げ400%に! 京都発、ひとりEC店舗の接客術
【第5回】 BASEとインスタで売り上げ700%の雑貨店 ECがリアルの3倍売れる
【第6回】デザイナー直販という新たなD2C 濃厚なストーリーでモノを売る ←今回はココ
しかし、当初から販売していた「BOOK on BOOK」という、本のページを開いたままにできるアクリル製の“透明な本”がテレビや新聞で取り上げられて話題になり、驚くほど売れた。そこから本腰を入れてECに取り組むようになったが、販促は希望する購入者に新商品を知らせるメールマガジンを出す程度。16年くらいまでは受注したデザインの仕事がボリュームとして圧倒的に大きく、ECの売り上げは毎月の事務所の家賃が払える程度だったという。
デザイナーが直接発信する「一次情報」でモノが売れる
そんな中、16年にTENTは“実験”を試みる。新商品「HINGE」のプレスリリースを出さず、展示会にも出さず、代わりに専用のウェブページを自主制作。そこにすごく長い開発秘話をアップしたのだ。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー