
「マーケター・オブ・ザ・イヤー2021」の4人目は、「帝国ホテル サービスアパートメント」の立ち上げで中心的な役割を担った帝国ホテル企画部次長の小池崇裕氏。2021年2月に予約受け付けを開始すると、用意した4カ月分が初日に満室となった。新たな需要を開拓し、その後も高い稼働率を誇る背景には、他社の長期宿泊プランとは似て非なる綿密に考え込まれた戦略があった。
帝国ホテル企画部次長の小池崇裕氏には、綿密な計算に基づく、十分な勝算があった。だが、それをはるかに上回る反響と結果がもたらされる──。
即日満室。「帝国ホテル サービスアパートメント」は、帝国ホテル 東京に月額料金で滞在できるという新サービスとして導入された。タワー館の客室を用い、最安のスタジオタイプ(約30平方メートル)の場合、料金は月額36万円(税金・サービス料込み、以下同)。2021年2月1日、3フロア99室の予約受け付けを開始すると、その日のうちに3月15日~7月15日までの4カ月分が満室となった。
長期宿泊プランにも見えるが、商品名は「サービスアパートメント」。両者には明確な違いがあるという。サービスアパートメントとは、一般的に中長期滞在を想定し、キッチンや家具、コンシェルジュサービスなど備えた、月決め賃貸マンションの高級仕様といえる。海外では珍しいものではなく、むしろ多くのホテルがサービスアパートメント事業を手掛けている。
日本の他社ホテルがコロナ禍の需要創出を狙って長期宿泊プランを相次いで提供し始める一方、ホテルの客室を使いながらサービスアパートメント事業を立ち上げる。ここに帝国ホテルとしての本気と覚悟があった。
【第2回】 AOKI「パジャマスーツ」、逆風下で3万着売った超スピード戦略
【第3回】 「生ジョッキ缶」誕生の真相 再び覚醒したアサヒ挑戦者のDNA
【第4回】 SDGs、体験価値、性差…常識そり落とした「紙カミソリ」
【第5回】 帝国ホテル「即日満室」の舞台裏 「住まう」へと価値を大転換 ←今回はココ
【第6回】 キウイブラザーズを生んだ南アフリカの経験 60秒CMが心を打った
【第7回】 マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞はアサヒビールの松山氏に決定
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー