マーケター・オブ・ザ・イヤー2021 第5回(写真)

「マーケター・オブ・ザ・イヤー2021」の4人目は、「帝国ホテル サービスアパートメント」の立ち上げで中心的な役割を担った帝国ホテル企画部次長の小池崇裕氏。2021年2月に予約受け付けを開始すると、用意した4カ月分が初日に満室となった。新たな需要を開拓し、その後も高い稼働率を誇る背景には、他社の長期宿泊プランとは似て非なる綿密に考え込まれた戦略があった。

帝国ホテル企画部次長の小池崇裕氏。1999年入社、2013年大阪営業部支配人、14年大阪総支配人室企画課長、16年東京営業部販売企画課長、20年から企画部課長、21年から現職
帝国ホテル企画部次長の小池崇裕氏。1999年入社、2013年大阪営業部支配人、14年大阪総支配人室企画課長、16年東京営業部販売企画課長、20年から企画部課長、21年から現職

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 帝国ホテル企画部次長の小池崇裕氏には、綿密な計算に基づく、十分な勝算があった。だが、それをはるかに上回る反響と結果がもたらされる──。

 即日満室。「帝国ホテル サービスアパートメント」は、帝国ホテル 東京に月額料金で滞在できるという新サービスとして導入された。タワー館の客室を用い、最安のスタジオタイプ(約30平方メートル)の場合、料金は月額36万円(税金・サービス料込み、以下同)。2021年2月1日、3フロア99室の予約受け付けを開始すると、その日のうちに3月15日~7月15日までの4カ月分が満室となった。

 長期宿泊プランにも見えるが、商品名は「サービスアパートメント」。両者には明確な違いがあるという。サービスアパートメントとは、一般的に中長期滞在を想定し、キッチンや家具、コンシェルジュサービスなど備えた、月決め賃貸マンションの高級仕様といえる。海外では珍しいものではなく、むしろ多くのホテルがサービスアパートメント事業を手掛けている。

 日本の他社ホテルがコロナ禍の需要創出を狙って長期宿泊プランを相次いで提供し始める一方、ホテルの客室を使いながらサービスアパートメント事業を立ち上げる。ここに帝国ホテルとしての本気と覚悟があった。

当初、タワー館の3フロアを一部改修して99室を用意(本館含む全客室は924室)
当初、タワー館の3フロアを一部改修して99室を用意(本館含む全客室は924室)
部屋タイプは、月額(30泊)36万円のスタジオタイプ(上)の他、同60万円のプレミアスタジオ(約50平方メートル・下)、同72万円のコネクティングスタジオ(約70平方メートル)。月額(30泊)以外、最短5泊で15万円~滞在できる。アメニティーは初日のみ提供。客室清掃やリネンなどの交換は1週間に3回
部屋タイプは、月額(30泊)36万円のスタジオタイプ(上)の他、同60万円のプレミアスタジオ(約50平方メートル・下)、同72万円のコネクティングスタジオ(約70平方メートル)。月額(30泊)以外、最短5泊で15万円~滞在できる。アメニティーは初日のみ提供。客室清掃やリネンなどの交換は1週間に3回

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