
「マーケター・オブ・ザ・イヤー2021」の3人目は、貝印でマーケティング本部やブランド企画部などの部長を務める鈴木曜氏。通常のカミソリと比べてプラスチックを98%削減した「紙カミソリ」のマーケティングを手掛けた。カミソリに「脱プラ」「体験価値」「ジェンダーフリー」という新しい価値を次々と注ぎ込んだ。2021年4月の試験販売では3日で完売。同年で創業113年の貝印としても、初挑戦ずくめだった。
紙でカミソリを組み立て、プラスチックを98%削減
カミソリを紙で作る――。そんな常識破りの商品を21年4月、貝印が発売した。紙カミソリはT字で組み立て式の3枚刃。同社の通常の3枚刃カミソリに比べてプラスチックを98%削減したのが特徴だ。ただ、常識を打ち破ったのは脱プラという製品特徴だけではない。組み立て式という体験価値の向上や数が限られた試験販売など、これまでの経験や発想だけにとらわれない新しさを打ち出した。
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紙カミソリは刃体の部分が金属、ハンドルの部分が紙でできている。刃の接着やコーティングに僅かにプラスチックを使っているものの、従来品から大幅にカットした。カミソリは通常、シェービングクリームや水とともに使うことが多く、一見すると紙との相性は最悪だが40度までのお湯に耐えられる。
ただ、こうした常識破りの商品が生まれるのは必然だったのかもしれない。開発に着手したのは18年。「今までにはないニーズを掘り起こすプロダクトを開発することが目的だった」(鈴木氏)からだ。そのためにはこれまでの枠組みから、あえてはみ出ることが必要だった。
まず、皮膚を傷つける刃の劣化を防ぎ、清潔に保てる使い切りの「1DAY カミソリ」のコンセプトが定まった。そこで生まれた案の一つが「紙製」だった。「これからはSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みがますます加速するに違いない。2年先を見越すと、市場はより大きくなる」。鈴木氏が採用した。
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