
「マーケター・オブ・ザ・イヤー2021」の1人目は、「パジャマスーツ」のマーケティングなどで中心的な役割を担った紳士服のAOKIで広報室長を務める飽田翔太氏。コロナ禍の在宅勤務などの広がりでスーツ市場に逆風が吹く中、2020年11月の発売から販売数は3万着を突破し、通常のスーツの3倍以上の売れ行きを誇る。ヒットの軌跡を追った。
「パジャマスーツありますか」 顧客の声に素早く反応
AOKIのパジャマスーツは「パジャマ以上、おしゃれ着未満」をコンセプトにしたテレワーク用スーツ。コロナ禍で在宅勤務が広がり、自宅でオンライン会議に参加する機会が増えた人は多い。ただ、会議のためだけにスーツを着るのは面倒。パジャマスーツはゆったりとした着心地ながら、スーツのようなパリッとした見た目を実現することで、テレワークの仕事着としての新しいマーケットを切り開いた。
「パジャマスーツ」という商品名は製品の特徴を的確に表現したキャッチーなものだが、実は20年11月の発売当初は別名だった。「ホーム&ワークウェア」シリーズとして販売されていた中、店頭でたまたま「パジャマスーツありますか」と問い合わせる顧客がいたという話が持ち上がった。「顧客になじんでいるものを商品名にしてしまうことにした」(飽田氏)。いったん発売した商品の名称を変えることは異例。販促物の差し替えなど追加のコストも発生するからだ。だが、AOKIの親会社であるAOKIホールディングスの青木拡憲会長も即決し、発売1カ月で「パジャマスーツ」に名前を変更した。
売り場の店頭販促(POP)をすぐさま刷新し、販売員のセールストークもパジャマスーツに変えた。急いで売り場を変える必要があったため、既存のPOPの上から新しいものを貼り付けただけの売り場もあった。飽田氏は「現場の声を生かす文化は以前からあったが、コロナ禍で先行きが見えない中、このスピード感が非常に重要だった」と話す。
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