
PayPayの手数料有料化を契機に中小小売店の開拓を積極的に推し進めるのは、QRコード決済事業者ばかりではない。三井住友カード(東京・江東)、リクルート(東京・中央)、それにカード国際ブランド運営会社の1つである米ビザ(Visa)傘下の日本法人ビザ・ワールドワイド・ジャパン(東京・千代田)などが、中小小売店を取り込むために積極的な手立てを繰り出している。その取り組みの中身を追った。
「2021年10月1日から12月末日までの間に、個店や中小小売店向けのサービス『stera pack』を導入してくれた店に対して、月額利用料3300円(税込み)を導入後3カ月間無料にするキャンペーンを、10月1日から始める」
こう語るのは、三井住友カード アクワイアリング統括部(東京)副部長の伊藤宏氏だ。
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stera packとは、(1)クレジットカードはもちろん、交通系や主要な電子マネー、主なQRコードによる決済に対応した、事業者向け次世代決済プラットフォーム「stera(ステラ)」の専用決済端末「stera terminal」と、(2)Visa、Mastercardブランドのクレジットカードに限り、通常のカード決済より安価な2.7~2.9%という決済手数料、それに(3)店舗業務を効率化するアプリ──という3つを1つのパッケージとして、端末1台当たり月額3300円(税込み)というサブスクリプションサービスの形で、21年4月から中小小売店向けに提供してきたものだ。
新サービス「Custella Trend」をstera pack加盟店に無料提供
多くのクレジットカード会社が、カードを消費者(ユーザー)に発行する「イシュイング」業務に軸足を置きつつある中、三井住友カードはカードを使える加盟店を開拓する「アクワイアリング」業務にも積極的に取り組む。そのため、クレジットカード会社や電子マネー運営会社がキャッシュレス決済の契約を交わす場合、3~6%程度の決済手数料を提示することが珍しくない中小小売店に対して、クレジットカード決済の決済手数料として2.7~2.9%(Visa、Mastercardブランド限定。導入1年目は2.8%。2年目以降は決済実績に基づいて2.7~2.9%の範囲内になる予定)の低率と月額利用料を提示する形で、21年4月から加盟を促してきた。
PayPayが決済手数料有料化に踏み切り、中小小売店の多くがキャッシュレス決済の導入の在り方について再考するであろうこのタイミングで、stera packのマーケティングを強化し、普及を推し進めようという考えだ。
そのため、月額利用料を3カ月無料にするキャンペーン以外にも手を打ってきた。三井住友カードは19年10月から、同社に蓄積された膨大なキャッシュレス決済のデータを、個人情報や加盟店情報が分からない形で、顧客企業のニーズに応じて分析・提供するデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」を提供してきた。
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